(1)一人暮らしの摂食障害における注意点をお話します。

親御さんやご本人からよくだされる疑問、不安の声

「摂食障害でも一人暮らしはできるの?」「どんなことに注意すればいいでしょうか?」「食べだしたら止まらなくならないか心配です」「生活費とか過食の費用もかかるし、一人暮らしさせて大丈夫かしら」といった声が親御さんやご本人からよく聞かれます。これからこうした疑問や不安についてお話していきましょう。

一人暮らしはこんなケースによくみられます

一人暮らしの摂食障害のケースはかなり多いといえましょう。娘が実家から遠くの大学に進学し下宿生活を始めるという形がよくみられます。また就職した先が遠く、寮生活に入るケースもあります。またとくに過食症の場合は親との葛藤が激しく両者が疲れはててしまい、やむなく子どもが一人暮らしを始めるという場合もあります。家族内にそれほど問題がなくても子ども「自立したい」と願い、一人暮らしを親が認めるという例もみられます。

一人暮らしには良い点もあります

カウンセリングは親子別々にするケースもあれば、母親と本人が最寄り駅のどこかで待ち合わせて一緒に来所というケースもあります。お互い生活環境や年齢が違いますので自分の考え方や感じ方が正しいと思い込み、いろんな点においてズレが生じてくることがよくあります。ふだん直接顔をあわせて話し合うということができないだけに、初めはわずかのズレだったのが、次第に大きな溝になってしまうということが一人暮らしの摂食障害のケースにはよくみられます。

しかしその反面、親子の距離が保たれているので、お互いが冷静になって考える心の余裕ができることも確かです。親も子どもがよく見えてきたり、子どもも自らが解決への工夫を考え出すという良い変化も期待できます。

問題点は親子で協力して解決、できない時は早めに専門家に相談を

一人暮らしの注意点などに気をつけておれば、スタートするのも自立を促すよいチャンスになるともいえましょう。ただその都度おきる大なり小なりの問題を、親子で向き合って解決しようという前向きの姿勢が大切です。またこじれだしたら自分たちだけで解決しようとせず、できるだけ専門家に相談しながら解決していくほうが早く良い結果をみることができます。

2011.07.04  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

2011.07.04

1.(1)一人暮らしの摂食障害における注意点をお話します。

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