「PLASMA」(2002.nov)に、拒食症、過食症についてティーンズへのアドバイスを
これからますます拒食症、過食症は増えていく
中学・高校生向けの心身の健康をめざす月刊誌「PLASMA」(芸術生活社)から取材をうけた。若い20才代の女性を中心に発症しやすかった摂食障害だが、だんだん年齢層が下がりつつある。軽い気持ちからスタートした「ダイエット」や「やせ」へのあこがれから本症の深みにはまらないように、若い世代への警鐘となる内容になっている。 取材を受けた当センターの福田所長と増井セラピストのコメント部分を中心に、その内容をここに本誌より抜粋しながら紹介したい。
この病気にかかりやすい子どもにはある傾向がある
「好き嫌いがハッキリしていて、他人の悪いところが許せないという潔癖さを持っている子に多いようです。しかも物事に夢中になりやすくて、その意志を持続できる完璧主義であることが多いんです。」(福田コメント)
本来自分が持っている性質や、成長しつつある自分を表に出さず、周囲と合わせることを優先させてしまう。その歪みが拒食、過食という症状になって現れてくる
「ですから、患者本人だけの問題ではなく、患者が合わせようとする周囲、特に一番近い周囲である”家族”との関係が重要なんです。本来的には素晴らしい能力を持った子が多いのもこの病気の特徴です。それを包み込むような「やさしい、思いやりの深い家族」一見理想的な家族。そういう家庭では争いやいさかい、自己主張のぶつけ合いがなく、傷つくことに慣れていないからなのです。」(増井コメント)
本症に原因はあるのだろうか?
「原因というものを一口でいうのは難しいのですが、やせていること=素晴らしいという”やせ礼賛”的な傾向と、それへの強い憧れを誰もが持つという部分。情報が氾濫している社会にあって、自分なりの価値観を持つ前に、多様な価値観にさらされて影響されてしまう、という側面。また姉妹も少なく、自分の考えをぶつけ合うこともない上に、すべてを与えられる環境など、さまざまな社会的要因もあります。」(福田コメント)
治療は本人を含めた家族のあり方を見つめ直すということですが
「地味ですが、細かな言動の記録が必要です。日常生活の会話をチェックし、自主性が取れていくように、小さなところから母親などの指示ではない主導的な言動が取れるように、本人や周囲の環境を調整していくのです。」(増井コメント)
本人の成長が途中で行き詰まっていないかを見極めることが大切
「そういう意味では”いかに生きていくか”の再認識でもあるわけですが、それは何も哲学的な命題などではなく、日常生活のいろいろな場面でどうすればいいか、という幅を広げていくことなんです。」(福田コメント)
困難で悲観に満ち、抽象的で分かりにくいという状況から、具体的なものを拾い上げ、建設的に築いていくという地道な治療が家族療法である。
2019.04.17 著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一
記事内容の監修医師
淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一
- 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
- 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
- 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
- その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
- 著書多数。
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