息子(高校3年)さんの家庭内暴力で悩むお母さんが来所されました。以前、電話で問い合わせをいただいたときは、「親ごさんの来所でお願いします。ご本人はぬきでおいでください」とお話ししたところ、「え、親だけの来所で息子の暴力が治るんですか!?」と、驚かれた方です。
息子の暴力のきっかけは、バスケット部をやめさされたこと
息子さんが、家庭内暴力を起こすようになってから4年がたつということです。おどおどしたようすでお母さんが来所されました。「もう、ちょっとでも気に入らないことがあると、すぐに手を挙げて殴りにくるんです。恐くて逃げると、そばにあった物を投げてきて。もうどうしようもありません」と、話されます。お話を聞いていくと、暴力は中学二年のころからはじまったようです。そのころは、まだテーブルをドーンとたたいたり、椅子をけったりというくらいでした。学年を追うにしたがって、だんだん暴力の度合いがひどくなってきたようです。
「暴力のきっかけは、おわかりですか?」
「バスケット部に入っていて、早朝練習に参加してたんですけど、そのせいか勉強のほうがすすまなくて。試験も悪い点しかとれないでいたんです。そしたら父親が『おまえ、なにしに学校へいっとんや』と、お尻たたいたりしてました。そんなんやったらバスケット部やめてしまえ!」ゆうて、むりやりにやめさせたんです。それからしばらくして暴力がでてきました。そやから、やっぱりむりにやめさせたんがいかんかったんやと思います」
「息子を診てやってほしい」と言う母親
暴力がはじまってから4年になるそうです。今は高校3年生なので受験もちかづいて、よけいイライラしているのか、すぐにキレルそうです。「私にはまだ手加減してると思うんですけど、それでも蹴られたり叩かれたりすると、痛くて痛くて。ほら、みてください」と、お母さんはブラウスの袖をまくってみせられた。その二の腕には、くっきりと大きな青アザができていました。
「かなりひどい暴力ですね。こちらは、そういう方たちもたくさん来所されています。時間は少しかかりますが、お手伝いできると思います」
「良くなるものでしょうか?」
「はい、多くの方が良くなっていかれてます。いっぺんにというわけにはいきませんが、こちらが出す課題をこつこつと積み上げていただければ、少しづつでも良くなっていかれます」
「あのー、問い合わせ電話では『息子さんの来所は必要ありません』と言われたんですけど・・・。でも本人をみないで、本当によくなるものでしょうか?」と、お母さんは半信半疑のようすです。
お母さんは、なんとかして息子を連れてきて、診てほしいというお気持ちでした。直接暴力をはたらく息子を専門の先生にみてもらって、一日でもはやく暴力をおさめてほしい、というお気持ちがありありと伝わってきました。
「本人ぬきで、親ごさんだけでカウンセリングをすすめていきます」
お母さんは、はじめて淀屋橋心理療法センターに電話をかけたときのやりとりを思い出しました。
電話受付:ご本人の来所は必要ありません。
母親:はあ?子どもつれていかなくていいんですか?
電話受付:ご本人は連れてこないでください。
母親:えー、そんな。それでカウンセリングの効果はあるんですか?なんで・・・・
電話受付:こちらは、家族療法を中心におこなっております。ご家族に対して、本人にどういう対応をしていくかというアドバイスをお出ししています。
母親:はい、わかりました。それじゃ、私ら親がそちらへ行けばいいんですね。
電話受付:はい、親ごさんだけでお越しください。
母親:はあー、それじゃ、最終的に本人を連れていくとかもないんですね?
電話受付:来所メンバーというのは、とても重要なんです。そのためにカウンセリングが進んだり滞ったりします。面接の経過にしたがって、もし息子さんが来所する必要があると思ったら、担当のカウンセラーからそのようにお話します。だからご本人を無理に連れてくる必要はありません。ご本人ぬきのほうが、うまくいく場合もたくさんあります。
母親:はあ、そうですか。あのー、毎日、恐くて・・・どうしたらいいか・・・わかりました。できるだけ早い時間帯の予約をお願いします。