不登校が長期化している子がふとした拍子に「来週から学校行くわー」とか「今度のテストは受けなやばいから受けるわー」と、親が喜ぶような「前向き宣言」を口にすることがあります。にわかには信じがたいと思いつつ、子どもからの自発的な発言だけに、親御さんもついつい期待してしまいがちに。
ところが、実際にふたを開けてみたら・・やっぱり起きてこない・・。「せっかく自分から行くと言ったんだから今日こそは!」と、いつも以上に強く起こしてみるものの結果は同じ。こうして「子どもの方からの前向き(再登校)宣言」→「登校失敗」→「不登校のまま親子の関係がいっそう気まずくなる」・・。このような関係に陥ってしまっているご家族は意外と多いのではないでしょうか。
「なぜ、この子は前向き宣言をしてしまうのか?」。長年の不登校のカウンセリングの経験から、多くの場合は2つの理由から「前向き宣言」をしてしまうことがわかっています。1つは「前向き宣言をして少しでも親に認められたい・喜んでもらいたい」という「気づかいタイプ」。もう1つは「自分をあえて崖っぷちに追い込み、そのプレッシャーで登校しよう」とする「プレッシャーを原動力にして登校しようとする子」です。いずれの場合も、再登校できるという根拠がしっかりしていないだけに、失敗する確率はどうしても高くなります。おまけに、このような宣言と失敗を繰り返していると、やがて親子の間で「再登校・学校」という話題がタブーになる傾向があります。しかし、このままではいっそう再登校の糸口が見えてきません。
一方で、こうした「宣言・失敗」をあえて切り口にし、再登校に導くという方法もあります。これらの失敗を活かす意味でも「親への気づかいをなくすにはどうすれば良いか」「自分に向いている原動力は何か?」を親と子の新しいテーマに設定するのです。そうしてカウンセリングを進める中で「気づかいの多い子」への接し方や会話の進め方のコツを親御さんにつかんでいただきつつ、「自分に合った原動力は何か」といったテーマで親子一緒に相談できるようになってくれば「本当の再登校」が見えてくる場合もよくあるのです。