【不登校】小学生のさみだれ不登校は、もう一歩で安定登校!
小学生のうちは、毎朝のように学校に行き渋ったり、実際に何日か休んでしまった場合でも、「何日かに一回は登校できる」という子がいます。いわゆる「さみだれ不登校」です。さみだれ不登校は、当センターのカウンセリングでは「安定登校の一歩手前」であると考えています。何日かに一回でも登校できるということは、「イヤなことや不安なことはあるけれど、完全拒否(完全不登校)ではない」ということなのです。
また、さみだれ不登校が何より好都合なのは、週に一回や月に数回の登校であったとしても、学校という「現場」を「身近」に経験しているということです。ずっと休んでしまっている完全不登校の子は、学校という「現場」から遠ざかっている分、登校した時のストレスの記憶自体がかすんでしまっている場合も多いのです。
さみだれ不登校のカウンセリングでは、「登校した日のストレス」を「いかに細かく再現できるか」に重点をおきます。特に小学生の場合、ふつうに「今日はどうだった?」と聞いただけでは「しんどかった」「疲れた」「なんかイヤだった」と、単語表現でしか説明できない子が多いのですが、そんな場合は親御さんの聞き方を工夫していただきます。私どもでは「小道具」と呼んでいますが、壁に貼った時間割をながめながら聞いてやったり、連絡帳の内容を読み上げながら質問してやったり。低学年の子なら「パペット(手にはめて口をパクパクさせるぬいぐるみ)」にお母さんの代わりに聞いてもらうと答えやすい子も。このような「時間割」「連絡帳」「パペット」といった小道具があった方が今日の出来事や感想を思い出しやすかったり、気軽にしゃべりやすいという子もいます。
それ以外にも、聞き出すタイミングやその場の人数や場所など、色々な工夫が必要になる場合もあります。また、子どもさんにもよりますが、大事な話ほど緊張するのか、顔を見合わせて話す・テレビを消して話すというよりは、二人でテレビを観ながら話すとか、中には、ゲームをしながらの方が話しやすいという子もいるのです。
しかし、ここまで複雑、かつ「ゲームをしながら話す」という一般常識から外れたような対応になってくると、親御さんの方がいささか困惑されたり、「ゲーム依存にならないかしら?」と、かえって不安に感じられる場合も少なくありません。もちろん、同じ対応をどなたにでもお勧めしているわけではありません。不登校のカウンセリングでは、親御さんからお聞きした情報をしっかりと分析した上で「その子その子に合った」聞き出し方や注意点などを考えてアドバイスしています。
さらに、その日のストレスを「その日の内に発散できる」ことも重要です。すると、「今日はしんどかったー。でも、お母さんに聴いてもらえてすっきりしたし、明日も行ってみようかなー」が期待できるかも!。これは小学生など低年齢・低学年の子ほど効果が期待できます。ポイントは「登校した日の内に、ストレスをしっかり発散できること」です。この力がついてくることで、「さみだれ登校」から「連続登校」という道が開けてくる場合が非常に多いのです。
2014.12.09 著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一
記事内容の監修医師
淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一
- 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
- 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
- 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
- その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
- 著書多数。
シリーズ記事
-
2014.11.20
-
不登校だった子がようやく登校する気に。これまで、クラスメートや担任の先生からこまめに連絡をもらい、休みの日には遊びに誘ってもらったり。一方の親御さんもカウンセリングでのアドバイスを受け、必死な対応の毎日だったと思います。 […]
-
2014.11.21
-
子どもさんが不登校やひきこもりになると、親子の会話も減ってしまうことがあります。一生懸命話しかけると嫌がられ、同じことを何回か言うと「しつこい!、うるさい!」の一言どまり・・。会話が少なくなると家庭の雰囲気も次第に暗く・ […]
-
2014.11.21
-
学校には行っているものの、なかなか教室には入れず、まずは保健室に。小学生の中には「保健室」を拠点とし、そこから少しずつステップアップしながら「教室」登校にこぎつけるケースが意外と多いのです。 数十人を受け持っている担任の […]
-
2014.11.26
-
小学生の不登校の子は、学校(授業)のある時間帯は家でひっそりしているものの、放課後になって友だちから遊びの誘いがかかると、すんなりと行ける子がいます。放課後や学校の休みの日ならば近所の公園で遊ぶこともできるし、自宅で数人 […]
-
2014.12.04
-
毎朝一緒に登校してやったり、授業中でも近くで見守ってやったり別室で待機してやったりと、「同伴登校」とはまさに「親子密着登校」といった感じです。以前は「小学1、2年生」の定番の再登校のステップの一つだったのですが、このとこ […]
-
2014.12.09
-
小学生のうちは、毎朝のように学校に行き渋ったり、実際に何日か休んでしまった場合でも、「何日かに一回は登校できる」という子がいます。いわゆる「さみだれ不登校」です。さみだれ不登校は、当センターのカウンセリングでは「安定登校 […]
-
2015.01.18
-
なかなか再登校ができなかった子でも、小学生の場合、二学期の後半、特に12月になると随分と授業内容が緩やかになるようです。 面談・懇談のある一週間は午前中だけの授業。それに、担任の先生の配慮によっては、「お楽しみ会」や「ク […]
-
2015.05.19
-
担任の先生の中には、毎日お忙しいにも関わらず、不登校の子がいつでも来れるようにとの配慮から「いつ来てもいいからねー」と、子どもを思いやった言葉をかけてくださる方がおられます。もちろん、そのお陰でちょっとずつ学校に行き始め […]
-
2015.07.09
-
小学生の不登校の子にとって、気になる事は「再登校」「勉強の遅れ」「友だち」だけとは限りません。意外と家庭の中にも気になる事があるのです。その一つが「弟・妹」たちです。 特に弟や妹が小さい場合(0才~幼稚園)、どうしても母 […]
-
2016.03.01
-
「わざと悪いことをして母親に叱られよう」という、いわゆる「親の気を引く行動」は、幼児(幼稚園児)や小学校低学年の子に多くみられる傾向です。子どもさんがまだまだ小さくて、親の方が力や口で勝っているうちは、「手のかかる子だな […]
関連記事
-
-
高校一年のY子は、不登校に加えて腹痛と多汗症に悩んでいた。腹痛が強いと学校を休んだり、痛みが治まってから登校するという日々を過ごしていた。そんなY子を起こすのは母親の役目だった。 仕事を持っている母は、Y子を何とか休ませ […]
-
2015.02.04
-
不登校が長期化している子がふとした拍子に「来週から学校行くわー」とか「今度のテストは受けなやばいから受けるわー」と、親が喜ぶような「前向き宣言」を口にすることがあります。にわかには信じがたいと思いつつ、子どもからの自発的 […]
-
2020.12.15
-
2020年も残すところあと数週間となりました。今年は、日々の生活スタイルが急速に変わった1年でした。きっと多くの方が戸惑い、これから先、当たり前の暮らしが戻ってくるのか、不安に思われているのではないでしょうか。そんな中、 […]
記事一覧へ