子育て中のお母さんへ:『子どもの「わがまま」で困ったときの言葉かけ』
- PHPのびのび子育て Special Edition
- PHP研究所
- 福田俊一 精神科医・所長
増井昌美 家族問題研究室長 - 780円
- 2012年9月
- 購入のお問い合わせは
03-3239-6233
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PHP研究所 www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-80448-4
『子どもの「わがまま」で困ったときの言葉がけ』という特集で、PHPのびのび子育て誌(PHP研究所)からスペシャル版がだされました。そこに当センターから出した記事が掲載されています(50p)。それをまとめてご紹介しましょう。
お母さん、言葉にできない子どもの苦しみに気づいていますか?
「心の闇」の受けとめ方・・・・・子どものつらさや悲しさの発信を感じ取り、しっかりケアしていきましょう。
【事例1】思い通りにならないとかんしゃくを起こす
幼稚園に通う真美ちゃん(5歳)はピンクの花模様のワンピースがお気に入りです。前日に汚してしまったので、お母さんは「そのワンピースは洗濯するから今日はこっちを着て行ってね」と言いました。すると真美ちゃんは、「このワンピースでないといや」と言い張ります。お母さんが洗濯しようとすると、「このワンピースでないといや!」と泣き叫びながらひっくり返って足をバタバタ・・・・・。「気に入らないといつもこう。どうしたらいいのかしら」と、お母さんは困ってしまいました。
●アドバイス:ゆっくり、ていねいに説明する
かんしゃくを起こす子の多くはこだわり性ですから、心の中にわだかまりがあるはずです。それをうまく言葉で言えず「ワーッ」となってしまうのでしょう。かんしゃくがおさまってから「あのワンピース、真美のお気に入りよね。とてもよく似合ってるわ。でも泥で汚れてるね」と見せながら、「真美の体も汚れてしまうから、きれいに洗おうね」と、ゆっくりと説明しましょう。かんしゃくが強い子は、頭の中がすぐに一つのことでいっぱいになってオーバーフローしやすい状態になります。だから一度に多くのことを言わないようにしましょう。一方的に言い聞かせるより、子どもにも言い分を言わせながらのほうがスムーズです。この積み重ねで、人の話も聞けて自分の言いたい事も言えるという器ができていくでしょう。
【事例2】学校へ行こうとすると腹痛が起こる
毎朝登校時刻が近づくと「お腹いたーい」と孝夫君(小3)はトイレに駆け込んで出てきません。お母さんが「学校に行きたくないんじゃないの。何かあったの?」と聞いても孝夫君は「わからない」と言うばかり。こんな状態がもう一週間も続いています。お母さんは不登校になってしまうのではと、心配でたまりません。「学校を休むなんて、怠けてるんじゃないか」とお父さんが厳しく言ったところ、朝になっても布団から出てこなくなり事態は悪くなる一方です。
●アドバイス:さりげなく話しあおう
孝夫君は「お腹が痛い」と訴えていますので、「それなら学校へ行くのはむりね」とまずは受け入れてみましょう。それでも腹痛が続くようなら「お医者さんに診てもらおうか」と声をかけ、そこで異状なしであれば、はじめて心のケアに入ります。子どもの心の中には学校へ行かないことへの罪悪感があるでしょうから、まずは「しばらくゆっくりしていいのよ」と言い、その罪悪感を取り除いてやります。そして、親子のコミュニケーションを大事にしましょう。孝夫君の好きなテレビやマンガなどについてさりげなく話し合っているうちに、緊張していた心もほぐれてくるでしょう。避けていた学校の話が子どもの口から自然に出てくることもよくあります。しっかりと聞いていると、目が輝いてきたり勢いよく話し出したりと次第に元気が湧いてきます。その頃には学校へ行けなかった理由も、自分から話出すということがよくあります。
【事例3】反抗的な態度をとる
「あんなにいい子だったのに、このごろ乱暴になって。悪い友だちでもできたのかしら」と、お母さんから息子の翔君(小6)について相談を受けました。「お箸の持ち方、違ってるよ」「こぼしたら拭こうね」と食事のときにお母さんが注意をすると、以前なら「はーい」と言って直していたのに、このごろ「うるさい、ババア」と言ったり、お箸を投げつけたりするそうです。お母さんはびっくりしたのと同時に恐さもあり、最近は腫れ物にさわるようにしか対応できなくなってしまったそうです。
●アドバイス:聞き役に徹し、気持ちを受けとめる
小学校高学年になると反抗的な態度を取るのはごく自然な変化です。いわゆる自我の芽が伸びて自己主張をはじめる頃です。親からあれこれ言われると抑えつけられている感じがして、大人のすることすべてがうっとおしく、かなり反抗的な態度を出してきます。程度にもよりますが、心配なことではありません。この頃の子どもたちは小さい頃から、怒りや不満などの負の感情を言葉で伝える習慣が少なくなってきています。そのせいでしょうか、中学生や高校生になっても、自己主張の仕方が幼稚で、言葉も荒く、とても世間で通用するものではありません。どこかで思いきり言いたいことを言い、しっかりと聞き役になって受け止めてもらえる場所が必要です。したいことをする中で、子どもは自分の芽の出し方を覚えていきます。
お知らせ:淀屋橋心理療法センターから子育てに関する本が2冊出ております。
『しぐさで子どもの心がわかる本』(PHP研究所福田俊一、増井昌美著)
本誌50p掲載