ひきこもりタイプの不登校

「ひきこもり」の「五段階」

「ひきこもり」の深刻度・解決の難易度のチェックリストです。

((C)淀屋橋心理療法センター2002)

第1段階(登校はしている、または、時々休む)

身体がだるそうで、朝なかなか起きてこない。

父親など、特定の家族を避けるようになる。

好きな話題については自分からよくしゃべる。

自分から友達の家には行かないが、訪ねてくると自室で笑い声も聞こえるぐらいよく話している。

自室で過ごす時間が長くなり、好きなことをしていることが多い。

第2段階(不登校になるが、家族とは交流がある)

食事は家族といっしょにとる。声をかけると、返事はないが割りと早く食卓につく。

自分のやりたいことがいくつかある。

母親とは色んな話題について話す。主張もする。

友人はほとんどいないか一人くらい。訪れてくれば自室で話したりする。

自室の掃除を月に1~2回、自分でやっている。

第3段階(不登校。心を許して話すのは母親のみ)

食事は家族と一緒に食べる。食後、母親とだけなら一緒にテレビをみたり会話をすることがある。

父親や他の家族にあいさつはするが、話し合おうとしない。母親を介して用件を伝えたする。

外出は夜に一人でコンビニに行く程度。

学校や友人からの電話にでるのを嫌がる。訪ねてきても、会うのを嫌がる。

第4段階(食事は一人で。母親とも少しの会話)

食事は出てきて食べるが、家族と一緒は避ける。

会話は母親とだけ。二、三言交わせる程度。

買ってきてほしい物、借りてきてほしいビデオ等を母親に頼む。

部屋の掃除をめったにせず、窓も閉め切ったまま。

父親を極端に避ける。

第5段階(こもりっきり。家族への不信感も顕著)

自室から出ず、食事も自室。一日一食が多い。

言葉での会話ができなくなる。メモなど。

無理に話しかけたり部屋から出そうとすると、親にでも暴力をふるう。

朝起きても着替えはほとんどせず、着たきり。

「腫れ物あつかい」「変人あつかい」になりがちな親子関係

ひきこもった子と毎日つきあっていると「やりにくい・あつかいにくい」と感じるのではないでしょうか。「右と言えば左」「やれと言えばやらない」と、いわゆる「あまのじゃく」で困っているという声をよく聞きます。無理じいすると激怒する子もいます。でも、よくよく考えてみるとそんな行動はひきこもってから始まったというよりは、以前からの「持ち味」である場合がけっこう多いものです。また、「何をやらせてもグズい」「ガンコで融通がきかない」「怒らせると恐い」「社交的でない」・・。他人と比べるとあまりにも違う面・変わった面が多いと感じるかもしれません。こういった気持ちは対応面にも影響がでてきます。「どうせ言っても無駄だし」「言ったら怒らないかしら」となり、本人も敏感に親の気持ちを察知します。これではなかなか前に進めません。

「みにくいアヒルの子」症候群

ひきこもっている子はある意味で「個性的」です。特に、物事を深く考える・決断に時間がかかる・発想がユニーク・のめりこみやすい・・など、身近な人と比べてもその違いがよくわかります。当の本人も「みんなと違う」という意識があり、それを意外と気にしています。また、自分と他人を比べているうち「みんなと同じように気軽にできない」「みんなのように誰とでも仲良くできない」、ついには「自分はおかしいんじゃないか」という気持ちに至ってしまうこともあります。とりわけ、日本人は「流行っているから私もやろう」「行列ができているから、きっとおいしい店にちがいない」といった、「多数派が正しい」という人が多いように思われます。これでは個性的な子ほどますます孤立感を感じざるを得ません。「みんなと違う」=「おかしい人・変人」となるわけです。

伸びる「芽」がここにあった!!

「ひきこもり」は「病気」ととらえるよりも「状態」ととらえた方がうまくいきます。「誰もわかってくれない」「元気がでない」「自分は人とは違うからダメ」といった気持ちのままではなかなか脱出できません。では、どうすれば子どもさんをひきこもり状態から脱出させることができるでしょうか。

話をしっかり聴いてやる。

本人が話すことに関心をむけ、相づちやオウム返し中心で対応することで、次第に口数が増えてきます。最初は批判でも不満でもかまいません。本人が「5」しゃべれば、こちらは「1」ぐらいで。なぐさめ・はげましやアドバイスは逆効果です。

「世間の常識は自分の非常識」ぐらいの気もちで。

「みんなが・・」「早く・・」は禁句に。世間の常識にとらわれていると、ついつい話の腰を折ってしまったり、顔にも出てしまいます。生活のリズムがくずれたり、風呂に何日も入らなくても大丈夫。後からいくらでも修正できるのです。何より大事なのは、自分のしゃべりたいことをしゃべりたいだけしゃべることです。

「気乗りすること」が大事

世間の常識だけでは動けないのと同じく、義務感が強すぎても動けません。不登校の子なら「学校にいかなければ」「勉強をしなければ」だけでは動けないのです。まずは「気乗りすること・興味のあること・夢中になれること」を探すことです。おなじゲームをするにも楽しんでやれる方が元気も出やすくなります。元気が出てくると「勉強してみようかなー」という気も起こりなりやすくなります。テレビをみてゲラゲラ笑ったり、趣味に没頭するのも効果的です。

個性的な自分を生かす

よくしゃべったり、気乗りして動けることが増えてくると、自分の性格(持ち味)が肯定できるようになってきます。「人と違っててもいいや」といった開きなおりでもいいのです。「自分の性格を理解してくれる人が身近にいる」+「自分の持ち味を伸ばしていこう、僕は磨けば光る(宝石の)原石なんだ」となれば大成功。

2019.04.17  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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