小づかい帳をつけて、過食の費用を管理
過食と闘って4年目の恵子さん(19才)。当センターのカウンセリングを受けて一年がたつ。来所し初めのころは、自暴自棄に陥っていた。「もうどうにでもなれ。太るだけ太れ!」こんな心境ですと話していた。もちろん過食にかかる費用など計算したこともない。本人のやる気が危機に瀕している状態で、どこまで治せるだろう。これは母親の協力、熱意にかけるしかないとセラピストは判断した。
恵子さんの過食がわずかづつ好転しだしたのは、母親の協力を得て「お金の管理」をしだしたころから。全ての金銭と通帳、はんこ、カードを母親に預かってもらった。毎日最低必要な費用だけををもらう。過食の費用も上限一日千円と決められた。苦しくても食べたくてもお金がないから買えない。家の冷蔵庫をあけても、すぐに食べられる物はおいてない。この状態が三ヶ月続いた。もちろん両親や家族の納得、協力がないとできることではないが、さいわい母親の「どんなことでも頑張ります。治してやれるものなら」という治療への熱意を示してもらえた。
やがて母親の管理の手をはなれ、恵子さんは自分で小づかい帳をつけ始めた。過食の費用として別の封筒に一月分をまとめて入れ、それ以上は使わないと決めた。が、そんなにうまくいくものではない。その間の苦しい気持ちを恵子さんは次のように寄せている。
恵子さんの手紙
「もうコントロールできてるはずなのに、一日千円が守れず、チョコレートとシュークリームを買ってしまいました。お母さんがお風呂に入ってるあいだに、食べて吐いて。「またやってしまった」という後悔の気もちでいっぱいです。長い間、協力してくれて、応援してくれてるお母さんには言えません。どんなにがっかりするかと思うと、情けなくって。
小づかい帳、今まできっちりつけてたのに、今日でゴチャゴチャになってしまいました。過食の費用も守れてたのに、自信ががらがらと崩れてしまいました。「こんなに過食に使ってしまって」と自己嫌悪になりそうです。先生、私ってほんとうにダメ人間ですね。はたして治る時がくるのでしょうか。
何回かの失敗を経験し、くじけそうになりながらも恵子さんはこの試みに挑戦した。半年たったころからきちんと「過食の費用は一日千円以内」を守れるようになり、感情の波が落ち着いてきた。「過食の費用が千円以内であれば、食べてもそんなに太らないんですね」という言葉がでるようになってから、逆にこの金額が下がりだしている。