質問3:過食症(食べ吐き)の買い物を親にさせる

Q3:「お母さん、過食するから早く食べ物買ってきて」と、当たり前のように言います。私は両手いっぱいスーパーの袋を抱えて帰ってくるのですが、こんなことしていていいのでしょうか?自分で買いにいかせたほうがいいのでは?

過食症(食べ吐き)の買い物を親にさせる。

ケースの状況説明

過食の買い物を自分でせず母親にさせるということは、過食症においてはよくあることです。その関わり方はケースバイケースです。この質問をだされたお母さんの娘さん(23才)は、かなり重い過食症でほとんどひきこもり状態です。だから毎日のように過食の買い物に行かされています。

また別の事例ですが、本人(20才)は外には出かけるけれど「重いから車で連れてって」と、親の車に便乗して買い物をしようとします。あっちのスーパーこっちのお店と自分のこだわりの食べ物を買うために延々と時間がかかり、その度に親も振り回され根をあげることがよくあります。

A:アドバイス

過食症の状態は一人一人違います。アドバイスは個々に対して出しますので、お読みになった方はご自分の状態に応じて参考になさってください。

まずはじめの重いひきこもり状態のケースについてです。過食の買い物を母親がやったからといって、娘さんから感謝されるということはあまりありません。だんだん買ってきてもらうのが当たり前になってくるし、自分が食べたいと思った物を買ってこなかったからとトラブルのモトになります。「私が食べたい物、言わなくてもわかってるでしょ」と言ったり、「パンは角のパン屋さんで、ケーキは○ブランドのよ」と、要求がだんだん細かくなってきたりします。「もう一回買い直してきてよ!」といった要求を平気でだして、過食症の子どもが女王様で母親は召使いといった関係になって親が疲れ果ててしまうということになります。

後のケースは、自分では外出もできるし学校にも通っているという状態です。しかし過食の買い物は絶対に自分でしようとしません。「いっぱい買ってると、オヤッ過食症?と思われるのいやだから」とか「重いから持てない」とかいろんな理由を言い張ります。これも急に状態を変えるのは難しいものがありますね。「やってあげてもいいけれど、週に3回までにしてね」とか「重いものだけは、お母さんが車で行ってあげる。それ以外は自分で買ってね」というふうに、限度を決めて少しづつ任せていくというやり方もあります。「お母さんも忙しいから、疲れてるのよ」と、納得させながら進めていくことが大切です。

いずれのケースも親への依存という形で治る道筋ではありません。ただ良くないとわかってもそこからすぐに脱出できるかというとなかなか複雑で難しいものがあり、変化を促すにはセラピスト(カウンセラー)と二人三脚で緻密なアプローチをコツコツと積み上げていきます。時間はかかりますが、変えていくことはできます。

2009.01.28  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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