大人の赤ちゃん返り(子ども返り)甘え

大人の赤ちゃん返り(子ども返り)甘えに困っておられる親御さんは少なくありません。

小学生の子どもさんが不登校になってからお母様といつも一緒に行動している。お母様がいないと不安で泣き出す。というようなケースは、子どもさんの赤ちゃん返りを受け入れ易いようです。「今は不安定な時期で寂しいのだろう。思い切り甘えさせてあげよう」と、親御さんは気持ちを切り替える事ができます。

ところが、20歳を過ぎた大人でも赤ちゃん返り(子ども返り)甘えのような現象が見られる事があります。例えば、本人は30歳の大人ですが、お母様を独占したがり四六時中お母様と一緒でないと気が済まない。お母様は一人で買い物に出かける事もできない。ベタベタと甘えてくる。夜はお母様が添い寝をしないと眠れない。頭をなでてほしい。抱っこしてほしい。膝枕をしてほしい。等もあります。

こういった大人の赤ちゃん返り(子ども返り)甘えは、摂食障害(過食症拒食症)うつひきこもり等の相談に来られた親御さんからきかれます。摂食障害(過食症拒食症)、うつ、ひきこもり等の症状が現れる以前は全くそんな事はなく自立した生活を送る大人だったのに、症状が長引くとともに、段々と赤ちゃん返り(子ども返り)甘えもエスカレートしていったようです。

大人の赤ちゃん返り(子ども返り)甘えを受け入れる事は難しいようです。お母様は精神的にもかなりの負担です。心配な反面、どう対応すればよいかが分からず混乱する方がほとんどです。どこまで受け入れたらよいかの判断がつかず、あまりの変わりように「脳の病気ではないか」と不安に駆られる親御さんもおられます。

淀屋橋心理療法センターの家族療法では、こういった大人の赤ちゃん返り(子ども返り)甘えについても、親御さんの不安にお答えしアドバイスを差し上げています。

しっかりしていたはずの娘さんが突然赤ちゃん返りし「ママ、クマさんなでなでして」と言い出したらどうしますか。落差にギョッとするかもしれませんし、何かの病気になってしまったのではないか?と思われるかもしれません。

しばしばこれは、緩むことを知らずに頑張る人に見られる現象で、時間を一度リセットして子どもに返ると言う現象が怒っている可能性があります。特に、甘えることのあまりなかった、しっかり者と思われた大人が、どうにもならずに行き詰まった時に見せている姿です。親御さんの対応によって、こじれるきっかけにもなるし、再生する良いきっかけになることもあるのです。

真面目で行き詰まっている人にとっては、甘えることはとても大事な逃げ道であり、やり直しのスタートになります。

本人さんに合わせ、甘えるお子さんを受け入れてあげる方が、お子さんの安心につながるでしょう。でも、親御さんは心配のあまり不安になられる方も多いので、状況をしっかり把握した上で、大丈夫なケースか否かお答えすることもできます。

ただ、もったいないのは、これをチャンスにしてうまく子どもさんを成長させるという技法を持っている専門家がとても少ないことです。お子さんは、赤ちゃん返りをしている時に、無理をしていたガードが下がり、とても素直な状態になっているのです。

再びガードが強くなって、その人の素直な面が見えなくなってしまう前に、本人さんとのコミュニケーションが良い形で発展するように持っていくことができれば、親子の力によって行き詰まっているお子さんが再復活するチャンスになるのです。

※紛らわしいケースに解離性障害があります。その時は対応が異なりますので注意が必要です。

大学生の万引きと夜尿症克服の事例〜大人の赤ちゃん返り(幼児退行)〜

2015.01.23  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》スタッフS

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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