<子どもの本来の性格>
「拒食症になるまでは、わが子は育てやすかったという方は?」と所長で医師の福田俊一が尋ねると、参加された親御さん全員が手を挙げられました。 これは4月19日(火)に行われた当センター主催の「親御さん向け拒食症治療説明会」での一場面です。今までは気遣いができる育てやすい子どもで、特に大きな問題はなかったけれど、拒食症を発症して初めて“こんなに頑固な性格だったんだ”と困惑している。そんな親御さんが多いことが分かります。 親がどんなに説得しても食べてくれない、病院に行くことも拒む。何が何でも痩せることにこだわるという、お子さんの凄まじいパワーに親御さんは圧倒されているのではありませんか?しかし、その姿こそお子さんの本来の性格であり、それが思春期になって現れてきたのだと、当センターは考えています。

<本人は困っていない?>
また、「拒食と過食ではだれが困っているかが異なるんです」と、所長の福田は話しました。過食症では吐き戻し等がつらくて、本人が困っていることが多いのに対し、拒食症では本人はあまり困っていないことが多い。困っているのは、痩せている本人と一緒にすごしている家族であると。 つまり、本人は痩せることが一番大事で、今まさに痩せていっているのだから、この現状にあまり困っていないのです。“もっと痩せたい!もっと痩せられる良い方法はないだろうか?”と必死ではありますが、そのこと自体を苦労とは思っていないでしょう。むしろ、どんどん痩せていく子どもを見て心配し、どうしようと困っているのは親御さんの方なのです。 このことから考えても、本人に治療を受けさせる難しさが分かります。困り感のない人に「病院へ相談に行こう」と言っても、きっと簡単には頷いてくれないですよね。だから親御さんは本人を説得することに、非常に苦労されるのです。
<思春期の拒食症治療は断られる?>
しかし、どうにかして本人を説得して病院に連れて行ったとしても、こんな問題が立ちはだかります。今回の説明会で親御さんから貴重なお話をお聞きしました。「なぜ、当センターの治療説明会に参加してくださったのですか?」と臨床心理士の福田俊介が質問すると、「実は、あちこちに断られて・・・」と話された親御さんがいらっしゃったのです。その親御さんいわく、“思春期の拒食症は扱っていない”と断られたり、“総合病院で内科と心療内科が連携しているところじゃないと診られない”と断られたりしたそうです。そして当センターをインターネットで見つけて下さったとのことでした。 やっと治療を受けさせられると思ったら、医療側から断られる。親御さんは途方に暮れたことでしょう。 他にも、「子どもが入院した時の主治医には信頼を置いているけれど、少し手詰まり感があって、親の接し方で悩んでいたから参加しました」と話してくださった方や、「子どもは病院に行くのを嫌がるので、親だけで治療を進められるところが良いなと思って」と話してくださった方などがいらっしゃいました。
<臨床心理士 福田俊介による 拒食症を克服したケース紹介>
また、拒食症治療説明会では、当センターのカウンセリングがどのように進んでいくのか、臨床心理士の福田俊介が実際のケースに基づいて話をします。カウンセリング自体が初めてという親御さんにもイメージしやすいように、分かりやすい説明を心がけています。 そして今回ご紹介したのは、大学1年生の女性Aさんのケースでしたが、Aさんの親御さんが当センターにご連絡くださったのは、Aさんがすでに身長150cm体重29kgになっている時でした。このケースでは親御さんが諦めずにカウンセリングを続け、様々な難局を乗り越えられて、Aさんは拒食症を克服することができましたが、当センターでは親御さんがまだ落ち着いて対応できる、なるべく早期に来所していただきたいと考えています。あまりにも本人の体重減少が著しいと、親御さんが心配のあまり、カウンセリングへ気持ちを向けることが難しくなり、その結果として治療の成果も下がってしまうからです。今、悩まれている方は、早めに来所されることをお勧めします。
<質問コーナー>
また、説明会の後半には質問コーナーを設けています。親御さん一人ひとりからの質問にお答えする大事な時間となっています。 今回も 「娘が罪悪感に囚われている気がします。どうやったら取り除いてあげられますか?」 「拒食から過食になり、人に見られることに抵抗があるようで・・・」 「学校に行かなくなったのですが、家で出来ることはありますか?」 「食べる前後には動かないといけないといった運動強迫があるようで・・・」などなど 親御さんからいくつもご質問いただき、お答えしました。