嬉しいご報告が届きました
~不登校を乗り越えた娘からの「ありがとう」~

嬉しいご報告が届きました~不登校を乗り越えた娘からの「ありがとう」~

皆さま、残暑厳しいなか、いかがお過ごしでしょうか?
学生さんは新学期が始まっていますが、実は夏休み明けは、不登校のご相談が増える時期でもあります。当センターも親御さんからのご連絡をたくさんいただいています。

そこで今回ご紹介したいのは、夏休み明けの9月、突然学校に行けなくなった娘さんのお話です。

では個人情報が特定されない範囲で、少しご紹介しますね。

娘さんは中学2年の9月、突然「学校に行きたくない」と言い出し、学校に行けない日々が続き、不登校状態になりました。

しかし、親御さんが初めて当センターに相談に来てくださったのは翌年3月のこと。
親として娘を何とかしてあげたいと、半年間頑張っておられたのですが、状況は変わらなかったそうです。
「どうしたらいいのでしょう・・・」と、途方に暮れた様子の親御さんが来所されました。

※相談に来てくださった時は、娘さんが遅刻や早退をしながら登校する日がぽつぽつ出てきた、いわゆる五月雨登校の状態でした。

娘さんは中学2年の9月、突然「学校に行きたくない」と言い出し、学校に行けない日々が続き、不登校状態になりました。

お話を伺うと、娘さんは元々、部活動や行事活動にも一生懸命取り組んでいて、クラスメイトから頼まれたら体育祭の委員長を引き受けるような、しっかり者タイプだったそうです。

だからこそ、そんな娘が突然不登校になるなんて・・・という親御さんの受け入れづらい思いがありました。

どうして学校に行きたくないんだろう。
親御さんは本人に直接聞いてみたそうですが、本人は「行けない理由がわからない」と答えるだけ。親御さんのこころは余計にモヤモヤするばかりでした。

そんな娘が突然不登校になるなんて・・・という親御さんの受け入れづらい思いがありました。

お母さんがカウンセリングに通い始めて、まもなくのこと。
お母さんが「今まで娘と向き合う時間が少なかったと気付きました」とおっしゃいました。具体的には「私はいつも娘と話をする時、何か家事をしながら聞いているな」と、ハッと思われたそうです。

私はいつも娘と話をする時、何か家事をしながら聞いているな

現実問題、母親は毎日忙しいですし、そうなってしまうことが多いと思います。
でもこのお母さんは「娘がせっかく話しかけてきても、私が家事をしていると、会話が長続きせず終わってしまっている」と気付き、娘さんと話す時は家事の手を止めるように工夫されました。

娘さんと話す時は家事の手を止めるように工夫されました。

すると変化があらわれます。
娘さんが2階の自室から下りてきて、お母さんと2人きりの時間を過ごそうとすることが増えたのです。
会話も長続きするようになり、特に好きなK-POPのDVDをお母さんと一緒に観ている時の、「あのシーン、めっちゃかっこよかった!!」というような話では、娘さんの喋る勢いはお母さんもびっくりする程でした。

娘さんの喋る勢いはお母さんもびっくりする程でした。

そしてカウンセリングを始めて数回が過ぎた頃、学校では『修学旅行』という一大イベントが控えていました。

娘さんは修学旅行には行きたいと思っていたそうですが、行き帰りのバス座席が苦手な友達の隣の席になってしまい、嫌だなぁと悩んでいました。
親御さんは「どうするのかな・・・」と見守っていると、娘さんは自分から「学校に言いに行く」と言って、座席を変えてもらえるよう先生に伝えたのです。
娘さんの成長がみられた場面でした。

娘さんは自分から「学校に言いに行く」と言って、座席を変えてもらえるよう先生に伝えたのです。

そして、自分でちゃんと先生に気持ちを伝えられたことを、お母さんに報告してくれました。その時の「昔の私なら我慢してたけど」という娘さんの言葉を聞いて、お母さんは「あぁ、今まで我慢してたんだな」と気付かれたそうです。

自分でちゃんと先生に気持ちを伝えられた

カウンセリングを重ねていき、お母さんが娘さんに合った対応を続けてくださると、娘さんの登校できる日がだんだん増えていきました。
3~4限目で早退していましたが、学校自体を休む日は2週間で1日ほどといった状態になり、お母さんも「娘が変わってきているのがわかります」とおっしゃいました。

でも実はこの後、また娘さんが学校に行けなくなる日々があったのです。

娘さんの不登校からの回復、とても順調に進んでいるように見えますよね。
でも実はこの後、また娘さんが学校に行けなくなる日々があったのです。親御さんは今まで以上に落胆してしまいます。

1週間登校できず、2週間登校できず、3週間登校できず。娘さんが学校に行く気配はありません。親御さんはそんな娘さんの姿をみて、「中3なのに、この子は進路どうするんだろう。何も考えていないんだろうか」と不安と苛立ちを感じておられました。

「中3なのに、この子は進路どうするんだろう。何も考えていないんだろうか」と不安と苛立ちを感じておられました。

でも、お母さんは諦めずにカウンセリングに通ってくださり、カウンセラーのアドバイスを聞き、娘さんに合った対応を続けてくださいました。

そして登校できなくなって約1ヶ月後。
娘さんが自分から「お母さん、この通信制高校の見学に行きたい」と学校のHPを見せながら言ったのです。
娘さんはその高校に興味のある分野のカリキュラムがあるから、行ってみたいと考えていること、でも自分の目で見てから決めたいと思っていることを、きちんと親に伝えることができました。

娘さんが自分から「お母さん、この通信制高校の見学に行きたい」と学校のHPを見せながら言ったのです。

そして、高校の見学に行って「私、ここに通いたい」と、自分で自分の進路を決めることができました。
娘さんはその後また調子が戻り、学校に少しずつ通うようになりました。

そして、ついに中学校の卒業式を迎えます。
卒業式の朝、娘さんはお父さん、お母さんにお手紙を渡してくれました。
手紙には「いつも私を支えてくれてありがとう。味方になってくれてありがとう」と書いてあり、親御さんは涙がこぼれたそうです。

卒業式の朝、娘さんはお父さん、お母さんにお手紙を渡してくれました。

実はこの娘さんは現在、大学生になっています。

中学卒業後、「私、ここに通いたい」と言った通信制高校に進学し、ますます元気に。アルバイトにも励み、どんどん自信をつけていきました。

行きたい大学が見つかったら、やっぱり「自分の目で見てから決める」と、オープンキャンパスに一人で行き、受験合格のため「塾に通うわ」と言って勉強も頑張りました。

そして受験当日は一人で会場に向かいます。見送ったその背中は、親御さんにはとてもたくましく見えたそうです。

無事合格の知らせを受け取られ、現在はキャンパスライフを楽しんでおられます。

無事合格の知らせを受け取られ、現在はキャンパスライフを楽しんでおられます。

この度は娘さんと一緒に近況報告に来てくださって、ありがとうございました。
生き生きとした娘さんの姿を見て、心から嬉しく思いました。
お母さんが諦めずにカウンセリングに通い、ご家庭で娘さんに合った対応を続けられたことが実を結び、本当によかったと思います。
何度か娘さんが調子を崩し、お母さんのこころが折れかけていた時が、今となっては懐かしいです。
これからもご家族皆さまのご多幸を心よりお祈りしております。

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2023.09.13  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》池尾有希子、福田俊介

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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