ネット・ゲーム依存症【カウンセリングによる】治療と回復事例&アドバイス

ネット・ゲーム依存症【カウンセリングによる】治療と回復事例&アドバイス

淀屋橋心理療法センターでは、2023年8月25日に親御さん向け「お子さんのゲーム依存症勉強会」を開催しました。

この記事では、ネット・ゲーム依存になりやすい人の特徴や症状をわかりやすく解説します。
またゲーム依存勉強会から、臨床心理士による、ネット・ゲーム依存症の「カウンセリングによる回復ケース」、医師によるQ&Aコーナーや、ゲーム依存症を克服するためのアドバイスなどをご紹介します。お子さんのネットやゲーム依存に悩まれている親御さん、ぜひご参考になさってみてください。

ネット・ゲーム依存症とは?

ネット・ゲーム依存症とは?

ゲーム依存やゲーム依存症と呼ばれていますが、医学病名は「ゲーム障害」です。
その他の呼び名として、ゲーム依存、ネット依存、インターネットゲーム依存などがあります。
淀屋橋心理療法センターでは、相談に来る親御さんが使われる「ゲーム依存」という呼び方をすることが多くあります。

2019年5月にWHO(世界保健機構)が、ゲーム障害を新たな病気として国際疾病分類の最新版(ICDー11)に追加することを決定しました。パソコンやスマートフォンの普及などから、ネット・ゲーム依存の問題が深刻化しています。また、世界的に見ても、ゲーム障害に対応できる医療機関や相談機関が少ないのが課題となっています。厚生労働省の調査結果によると、ネット・ゲーム依存症の疑いがある中学・高校生が93万人となり、過去5年間で急増しています。

出典: 厚生労働省

ゲーム依存症になりやすい人の特徴

ゲーム依存症になりやすい人の特徴

淀屋橋心理療法センターにネット・ゲーム依存でご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
ゲーム依存の患者さんの特徴として、いくつか共通している特徴があります。

▶ ゲーム依存症になりやすい人の特徴
□ 人に認められたい思いが強い
□ 人とコミニュケーションをとるのが苦手
□ 自分に自信がない
□ 興味のあることには高い集中力を発揮するが、興味の幅が狭くなっている
□ ゲーム以外に集中力を発揮する場所がなくモヤモヤしている

出典: 淀屋橋心理療法センター

患者さんの多くは、ネットやゲームを長時間できる高い集中力をお持ちの方が多いです。
また、「本来は人が、好きだけど、コミニュケーションが上手くとれない」ので自分に自信がなく、ゲーム以外での他者とのコミニュケーションを苦手としてしまう傾向があります。

ゲーム依存症の症状

WHO

WHO(世界保健機構)によるゲーム依存症(ゲーム障害)の診断基準は下記の通りです。

▶ゲーム依存症の症状
□ ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールできない
□ ゲームをすることが最優先された生活
□ ゲーム以外のことにあまり関心を示さなくなる
□ 問題がおきていても、ゲームを続ける、またはエスカレートする
□ ゲームに関することで、感情をコントロールすることが難しい
□ 日常に重大な支障をきたす(昼夜逆転の生活、不登校、会社に行けないなど)

出典:WHO

これらの症状が12ヵ月以上続く場合、ゲーム依存症と診断される可能性が高いとされています。
コロナウイルスの感染拡大以降、外出自粛などで自宅に居ることが多くなったこともあり、子どもたちのゲーム依存の増加はますます懸念されています。

ネット・ゲーム依存治療説明会のご紹介

ネット・ゲーム依存治療説明会のご紹介

2023年8月25日(金)に、親御さん向けの「ゲーム依存治療説明会」を当センターで開催しました。
早い段階から、説明会のご予約は満員になり、当日多くの方々にご来場いただきました。
また、とても心に残っているのは、保護者の皆さまの和やかな雰囲気と、治療説明会のご感想やゲーム依存症のご質問を多く頂いたことです。参加された親御さんから、わが子を思う優しさと、お子さんのゲーム依存症を克服したいという熱い思いを感じました。

治療説明会プログラム

ゲーム依存説明会では、第一部に臨床心理士 福田俊介からの回復ケースを紹介。そこで、親御さんへのゲーム依存の子供との関わり方や、淀屋橋心理療法センターの治療(カウンセリング)の様子を見ていただきました。
第二部では、当センター所長で医師の 福田俊一から、ゲーム依存症についての話、参加者とのQ&Aコーナーがありました。

治療説明会プログラム

カウンセリングによる回復事例

ゲーム依存説明会から、臨床心理士 福田俊介が紹介した【ゲーム依存症回復ケース】の一部をご紹介します。
淀屋橋心理療法センターの治療の進め方や、臨床心理士から親御さんへのアドバイスもあります。
ぜひご参考になさってみてください。

回復したケースの紹介

回復したケースの紹介

名前:
サトシくん(仮名)・中学2年生
[スマートフォン・ゲーム依存]

性格:
マイペース・協調性がない
興味のあることを一方的に話す

症状:
昼夜逆転・不登校・元気がなく、目に力がない

お父さんとお母さんが来所されました。
カウンセラーはサトシくんの性格を分析し、彼に合った2つのアドバイスを親御さんにしました。
※ここでご紹介するのは、あくまでもサトシ君の場合に有効なアドバイスです。

1.ゲームのし過ぎを注意することを控える
NGワード:「ゲームをやめなさい!」

2.昼夜逆転を無理に直そうとしない
NGワード:「さあ朝よ、起きなさい!いつまで寝てるの!」

親御さんはこのアドバイスを実行していきました。

1ヵ月後 🙂

【サトシくんの変化】
穏やかな表情になった
たまに自分から話しかけてくるようになりました。

次に、サトシくんに適したアドバイスはこちらです。

1.一方的なしゃべりを受け入れる

2.親御さんが色々言いたいのを我慢
 聞く側に徹する、アドバイスや指図をしないようにする

親御さんは、このアドバイスを実行することが不安だったようで、「本当にそれで良いのですか?」と聞いて来られましたが、最終的に納得され、アドバイス通り実行されました。

2ヵ月後 😄

【サトシくんの変化】
・よく話してくれるようになった(口数が増加)
・目がイキイキとしている
・親とも以前に比べて積極的にコミュニケーションをとるようになった
・「これ、見てみてー!」と、スマホやゲーム機の画面を見せてきて、自分の気持ちを出してくる、親と楽しみを共有したくなった

【臨床心理士】ゲーム依存回復アドバイス①

「良くなってきなたー」と感じても、今は道半ばです。油断してはだめですよ。

臨床心理士 福田俊介

上手くいっているように見えて、まだ症状に波がある段階。 結果を出すためには、まず3ヵ月はカウンセリングに通われることをお勧めしています。 そこまで忍耐強く、カウンセラーのアドバイスを実行できるかが回復の大きなポイントです。

ゲーム依存症を回復、克服させるためには、親御さんの気が緩んでしまわないようにすることが大切なのです。しかし、そうお伝えしても実際には、気が緩んでしまう親御さんが多くいらっしゃいます。そうならないためには、カウンセラーとの信頼関係が大切になってきます。カウンセラーとよく話し合い、お子さんの行動・言動をしっかりと分析し、親御さんもお子さんの状態を冷静に見極めることが必要です。

カウンセリングでの良い変化

8カ月のカウンセリングでサトシくんは、さらに良い変化を見せていきます。 ゲームのこと以外に無関心だったのが、他人の変化にも気付いたり、自らコミュニケーションをどんどん取るようになりました。

【8ヵ月後】

‐ 視野の広がり
・「お母さん、今日いつもの服と違うね!」
・「お姉ちゃん、最近なんか楽しそうだね」

‐ 自主性・協調性
・お姉ちゃんの食べ終わったお皿もシンクまで運んであげた
・元気な時に家族全員のお皿を洗う日も出てきた
 (これにはお母さんもビックリ)
・家族旅行中、スマホを触らず家族との会話を楽しめた
など・・・

【臨床心理士】ゲーム依存回復アドバイス②

今回のサトシくんのケースでは、ゲームをやめさせるのではなく、「ゲームと共存」していくことで、会話の広がりが見られました。ゲームの話題、その子が好きな話題(YouTuber、芸能人、ネットニュース、食べ物など)を通して、親子の会話が活発になります。

ところが、そうしていると、祖父母や親戚の方から、「甘やかせすぎだ」とか、「ゲームを取り上げた方がいい」と色々言われることもあると思います。ここで大事なのは、親御さんが周囲の声に心を揺さぶられないことです。

親御さんが、ゲーム依存のお子さんとの接し方のコツを掴み、それを数ヶ月続けることがとても大切なのです。 その子に最適な方法で接していけば、視野も広がり、協調性、自主性も出てくるのです。

サトシくんはゲーム依存症で不登校でしたが、学校に登校できるようになりました。ゲーム依存症の子から、普通のゲーム好きの子になったのです。

臨床心理士 福田俊介

依存症のお子さんとの関わり方

依存症のお子さんとの関わり方

「ゲーム依存症」、「ゲーム障害」、「ネット依存症」と聞くと、完全にゲームやネットから離れて克服させるイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、全世代のネット個人利用率が80%を超え、スマートフォンの利用率が中・高生で75%以上、20・30代で90%を超えている現代では、ご家庭で強制的にスマートフォン、ゲームから離れさせるのはとても難しいことだと思います。

お子さんは、好きなものを取り上げられるショックから、親に「自分のことを認めてもらえてない」と思い、暴言や暴力を振るってしまうことも少なくありません。

特に中学生以降では、保護者が強制的にインターネットやゲーム機器を取り上げようとしても、 依存者からの暴言や暴力を受け、失敗に終わることも多い。 結局、依存者は回復を先送りする選択を繰り返しているうちに、 回復が難しくなってしまうことも稀ではない。

出典:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター

ゲーム依存の子どもとの関わり方ポイント

ゲーム依存の子どもとの関わり方ポイント

親御さんは、子供の自主性を認めつつ、子供としっかり向き合い、成長を喜べるようにしたいものですね。そのためには親子の会話、コミニュケーションがとても重要です。 ゲーム依存症のお子さんとの関わり方のポイントは以下の通りです。

▶ ゲーム依存の子どもとの関わり方ポイント

‐ 子供としっかり向き合う
話しをよく聞く、その子を認める)

‐ コツコツ接し方を変える
(その時々に最適な接し方で対応する)

‐ 子供とゲームの話しができる
(ゲームの話から会話が生まれ、能動的に変化する/ もしゲームの話が親子の間でしっかりと嚙み合うようになれば、ゲーム以外の話題も増えてくる)

‐ 子供の成長を喜べる
(どうしてもお子さんの問題点に注目してしまいがちですが、お子さんの些細な変化、成長を親が気付き喜べる)

お子さんの好きなゲームを通じて、親子の会話を発展させ、お子さんの視野がゲーム以外にも広がっていくこと。そして、お子さんが自主的で能動的に日常生活を送れることが、ネット・ゲーム依存症克服のカギとなります。

また、注意していただきたいのが、
これらのポイントを心がけるのと実際にネット・ゲーム依存症から克服し
成果を出すということには大きな違いがあります。

お子さんに劇的な変化がないと「成功した」と言えないのです。
依存症専門機関での治療が必要な理由はそこにあります。

ゲーム依存に悩む親御さんの質問【Q&A】

【Q&A】ゲーム依存に悩む親御さんの質問

ゲーム依存症では、昼夜逆転や不登校、ゲーム中の暴力、暴れるといった症状もでてきます。 実際に治療説明会に来て下さった保護者の方のリアルなご質問と、淀屋橋心理療法センター所長で医師の福田俊一がその質問にお答えします。今回はその一部をご紹介します。

昼夜逆転

Q.ネットやゲームに集中しすぎて、昼夜逆転してしまっています。
 昼夜逆転を直す方法を教えてください。

お子さんが外の社会で役割が与えられれば、生活リズムは自然に戻ってきて、昼夜逆転は直ります。ただ、昼夜逆転を親が直すのはとても難しいことです。

この際、1番のポイントはお子さんご本人の自発性、能動性を伸ばすことです。親子の会話を大切にしましょう。お子さんの話をよく聞いてあげてください。そうすれば自己肯定感が高まり、自発性、能動性も出てきます。そして、話を聞いてもらえることが幸せだと感じてもらえるようにしましょう。お子さんの好きなことや、興味のある話題から能動性を引き出すことが大切です。日常の些細な会話、雑談が盛り上がるくらい、能動性を刺激し、自発的に動ける・考えることができるようになる。これこそが、昼夜逆転を克服することに繋がります。

ただ、ゲーム依存の状態にあるお子さんとのコミニュケーションを増やすのは、難しいことがあります。その場合、専門家の力を借りる必要があるでしょう。

暴力・暴れる

Q.高校1年生の息子がゲームに依存しています。集中し過ぎて、ゲームで負けると怒って壁に穴を開けたり、ドタバタ暴れています。親はどう対応したらいいですか?

とてもこだわりの強いお子さんの特徴がよくでていますね。こういうケースもやはり、親御さんの対応でお子さんの言葉からまずは変化していきます。親御さんは、お子さんの何気ない言動や行動を通して、回復するために必要な、小さなサインを見つけていくようにしましょう。また、自己肯定感を高めてあげることで、ゲームの世界から外の現実世界へと視野も広がっていきます。

ネット・ゲーム依存症を克服するには?

ネット・ゲーム依存症を克服するには?

ネット・ゲーム依存のお子さんと向き合う時、親御さんは我慢や苦労が絶えません。
大切なのは、「その子に合った対応・話し方」、また「いつも話を聞く側にいること」。
そうすれば、必ず良い変化が見えてきます。
そして、その小さな変化が見えてきても、決して油断しないでください。

ネット・ゲーム依存症と立ち向かい、克服するためには、この“挑戦”に対して、
親御さんの「強い覚悟が必要」です。大きな波がやってきて、あきらめたくなることが何度かあるでしょう。
しかし、そんな中でも、あきらめないことが大切です。

親御さんだけで対応するには、難しい時、苦しい時があると思います。
そういった時は、さまざまなサポートや専門機関の力を借りてください。
ゲーム依存克服のためにとても必要なことです。

この挑戦に、強い思いで立ち向かっていきましょう。

精神科医・淀屋橋心理療法センター 所長 福田俊一

淀屋橋心理療法センターのゲーム依存症治療

当センターの家族療法により、ゲーム依存症は、ゲームを取り上げなくても、症状の回復、親子関係の改善をはかるなかで、ゲーム依存が解決するケースがいくつもあります。
患者さんの状況に応じた治療を進めています。

<淀屋橋心理療法センターの特徴>

□ お子さんの来所は基本的に必要ありません。
□ ゲームから完全に引き離すことはしません。
□ 親御さんとお話し、お子さんの性格に合った対応・解決策のアドバイスを差し上げます。
□ 適度にゲームと関わりながら、健康的な日常生活が送れるように治療を進めていきます。

淀屋橋心理療法センターへのお問い合わせ

淀屋橋心理療法センター問い合わせ

● 本格的なカウンセリングに入る前の、事前相談(1時間5,000円)も随時承っております。
→カウンセリングとの相性を見たり、カウンセリングの方法をご理解いただくのにいい機会です。

ゲーム依存症から『ゲーム好き』なお子さんへ

ゲームをする子供と見守る両親

ここまで、臨床の現場から見たリアルなゲーム依存症の回復ケースや、Q&Aコーナー、ネット・ゲーム依存症を克服するためのアドバイスなどをお届けしました。

「ゲーム依存症のお子さんをどこにでもいるゲーム好きな子」にするためは、まずその子のありのままを認めて、お子さんとしっかり向き合うことから始まるのですね。この記事が少しでも、ゲーム依存のお子さんと向き合う親御さんの励まし、お役に立てれば幸いです。

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2023.10.01  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》上江洲りべか

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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