2024年2月16日(金)開催
淀屋橋心理療法センター「過食症を乗り越えるための親御さん向け治療説明会」レポート記事
進学や就職、春は新生活が始まる季節。
お子さんのとりまく環境がガラッと変化するため、当センターには親御さんからの心配の声が多数寄せられます。
過食症の不安を抱えながら始まる新生活。
親御さんはとてもハラハラしたお気持ちで、お子さんを送り出すことになる事と思います。
ましてや、親子が離れて暮らすことになった時・・・「過食症の子どもを一人にさせて本当に大丈夫だろうか」と、親御さんの心配は計り知れないでしょう。
今回の記事では、「親子が離れて暮らす場合の過食症」や「過食症の治療で大切な事」などについてお話いたします。
目次
【一人暮らし】親子が離れて暮らしても、過食症は治せるの?
親子が離れて暮らす場合の過食症に関して、親御さんからは様々なご質問をいただきます。
そのご質問の一部を、当センター所長・精神科医師の福田俊一の返答と一緒にご紹介いたします。
【1】親子が離れて暮らしたら、親が子どもの“食”を管理できなくなり、子どもの過食がますます悪化するでしょうか?
元々親子が一緒に暮らしているからといって、食の管理ができているかと言ったら、そうとも限りませんよね。
むしろ一緒に暮らしていて「お母さんがしっかり管理してくれないから食べちゃったじゃない!」と、お母さんを責めるパターンや、食の管理をめぐって親子関係が悪化するパターン…こういう事が起きてしまうほうが多いと思います。
しかし離れて暮らす事になると、お子さんは食の管理に関してお母さんのせいにはできなくなりますね。そうなると、親子の依存のようなものがなくなります。
離れて暮らす事は逆に、親子関係が良くなるチャンスでもあるのです。
また、親が食を管理しているからといって、過食症が治る可能性は低いといえます。
【2】子どもが親と完全に距離を取って自立しようとしている。自立することで過食症が治ると思っているようなのですが…
お子さんが親から距離を取ることで、親はお子さんの様子がわからなくなってしまいますね。
そうなると、「娘は誰にも助けを求められず相談もできないまま、孤立して過食症がどんどんこじれてしまうかもしれない」などと親御さんは心配される事と思います。
過食症を治すために、自立しようと考える事自体は良いのですが、「親から離れ、親との関係を断てば自立」と考えてしまうのであれば、それは正しいとは言えません。
しっかりした親子関係がある上で自立できたほうが、とても自然な自立を得る事ができるのです。
大切なのは、離れていても親子でどういう関係を築けるか。
実はそれが、離れていても「電話」という手段で、親子の関係を良い形に構築できるのです。
※詳しくは次の質問【3】をご覧ください。
離れて暮らしていると親は直接の手出しはできません。しかし良い親子関係を築けているのであれば、自然な自立ができるようになります。
ただし、その関係を作るためには専門的な知識と実践が必要な場合があります。
【3】親子が離れて暮らしているのですが、淀屋橋心理療法センターで過食症の治療をする事は可能ですか?
少し工夫はいりますが、淀屋橋心理療法センターでは、逆に親子が離れている事をチャンスにして治療を進める事ができます。
例えばその一つは「電話」です。
電話で話す、という短い時間をつかい、工夫するのです。
考えてみてください。
親元から離れたばかりのお子さんは、心細い気持ちが少なからずあるはずです。
また、新生活の始まりと共に、たくさんの新しい経験をするでしょう。
こういった事をきっかけに、親子で話し合うべき新鮮な話題を増やします。
親子の会話の相性を専門家のもとで細かくチェックする事により、お子さんが話しづらくなるような会話のパターンを排除したり、話しやすい会話のパターンを探していき、調整していきます。
そうすれば、お子さんの「もっとお母さん(もしくはお父さん)と話したい」という気持ちを引き出すことに成功するかもしれません。
お子さんが自分の気持ちを上手く喋ることができるようになれば、たとえ直接一緒に暮らしていなくても、親子の絆を太くしていくことができます。
そしてこれが、過食症治療に向けて非常に良い環境を作り出していくのです。
〈詳しくは、淀屋橋心理療法センターHP(摂食障害)をご覧ください〉
また、一緒に暮らしていた時はお互い窮屈だった…なんて関係の親子もいらっしゃるでしょう。
かえって離れて暮らしているほうが、親が24時間ずっと子どもに気を遣うよりも、短い時間電話で話すことに集中するほうが、やりやすかったりします。
当センターでカウンセリングを受け、過食症を解決された方の中には、親御さんが日本で暮らし、お子さんが海外に留学しているなど、「海外⇔日本」というパターンの成功事例も多くあります。
ですから、親子が一緒に暮らしていないと過食症の治療は難しいのではないか?と諦める必要はありません。
過食症の方に【正論のアドバイス】をする事は意味があるのか
アドバイスは響かない
「うちの子は頑固なので、カウンセリングに通ってもお医者さんのアドバイスは聞かないんです」
過去にカウンセリングに通われ、過食症を治すことに失敗してしまったという経験をされている方からよく聞くセリフです。
過食症になる方の性格の傾向として、
表面上は人当たりが良く穏やかな印象があるけれど、実は頑固で自分の意志を曲げない
というような方が多く(もちろん、そうではない方もいらっしゃいます)、そのためカウンセリングを受けても、カウンセラーからのアドバイスが響かないという事が多いのです。
過食症の方にとって、痩せることの意味
「うちの子は、過食嘔吐するようになって痩せてきれいになりました。みんなからも“可愛くなったね”と言われて、嬉しそうです。娘はキラキラ輝いているように見えますが、その裏で苦しんでいる事も多く、過食嘔吐はやめられません。」
これも、過食症の娘さんをもつお母さんのセリフです。
過食症になる方の中には、痩せることによってご自身を輝かせようと考える方が多くいらっしゃいます。
ですから、しっかり食事を取り、吐かずに体重を増やすという事はとても許しがたい行為になります。
痩せることが正義、太ることは悪、そのような考え方からなかなか抜け出すことができません。
その考え方はとても問題ではありますが、そう思い込んでしまっている状態のご本人にとって、「三食きちんと食事を取ろう」「夜中食べるのは我慢しよう」と言ったり「吐く事はやめよう」などという正論のアドバイスをする事は、あまり意味がない場合が多いのです。
過食症の治療で大切な事
食べる気持ちを制圧する事
過食症の方にとって、「食べる気持ちを制圧する事」は、ご本人の自尊心を保てるか保てないかというくらいの大きな問題です。前述の通り、「食」にフォーカスして正論のアドバイスをしても、ご本人には響かない場合が多いのです。
ですから過食症の治療をするにあたって、「食」にばかりに気を取られていると、なかなか解決の道は開かれません。それよりも、もっと広い視野で物事を見る必要があります。
その一つは、ご本人の「生きづらさ」にフォーカスすることです。
過食症の方の生きづらさ
しかし、過食症のご本人に直接「生きづらさ」について考えるようにお話しても、あまりピンとこないかもしれません。
なぜなら彼(彼女)たちは、それよりも「痩せる事」に大きく意識が傾いているからです。
淀屋橋心理療法センターの過食症治療は、過食症で苦しむご本人に対し、直接「こうしましょう」とアドバイスをすることは基本的にはありません。
〈詳しくは、淀屋橋心理療法センターHP(お子さんご本人の来所は不要)をご覧ください〉
ご本人の状況や親子の関わり方の現状を詳しく把握したうえで、親御さんがどのように関わっていけばよいのかを徹底的に分析させていただきます。
そして、親子のコミュニケーションから生まれるご本人の力を上手に生かしながら「生きづらさ」を変えていき、過食症を治療していきます。
過食症を治すという事は、三食健康的にご飯を食べられるようになる事だけではありません。この先、ご本人が「生きづらさ」を抱えることなく、イキイキと自立して生きていけるようになる事ができるようになって初めて、過食症の解決と言えるのです。
〈詳しくは、淀屋橋心理療法センターHP(摂食障害)をご覧ください〉
どこかで生き方を変えないと
「生きづらさ」の中身は人それぞれです。
人に気を遣いすぎる、人の目が気になりすぎる、必要以上に頑張ってしまう、自分は何も頑張れていないと思い込む…色々なタイプの「生きづらさ」があるでしょう。
そのポジションに自分を置くことで、自分の居場所を保ってきたという方もいらっしゃるでしょう。
しかしそれが苦しいと感じているのなら、どこかで生き方を変えていかなければ、過食症の根本解決も難しくなってしまします。
過食症のお子さんを持つ親御さんの話で、このようなものがありました。
うちの娘は優しくて気を遣いすぎるから、友達や先輩の愚痴をずっと聞かされているようです。
それで疲れ果てて家に帰ってきて、ぶわっと火が付いたように泣くんです。
私(母)が「大丈夫?愚痴でもなんでもいいから吐き出して?」と言っても、「どう言えばいいかわからない…」と、娘は何も吐き出しません。
そしてしばらくしてから私のところへやってきて「自己処理できたからもう大丈夫…」と言うのです。無理をしているような元気のない笑顔です。
人の愚痴は聞けるけど、自分から愚痴は言えません。
この短いエピソードの中にも、過食症で苦しむ方の問題点が少し見えてくるのではないでしょうか。
淀屋橋心理療法センターのHPでは、過食症の方の「生きづらさ」を題材にして書かれた記事を多く掲載しています。ぜひご覧ください。
摂食障害になったのは頑張り屋の優しい女の子でした1【実話 小説】
摂食障害になったのは頑張り屋の優しい女の子でした2【過食症 小説】
摂食障害になったのは頑張り屋の優しい女の子でした3【過食症 克服】
【おわりに】新生活は、過食症治療に踏み出すタイミングです
新生活は、過食症の治療に踏み出す良いタイミングです。
環境が変化することによって、お子さんの新しい経験や体験が増え、それが親子の会話に繋がることもあります。
また親子が離れて暮らす場合は、電話やメールという新しい繋がりの中で、新たな親子関係を作り出していくことができます。
直接、お子さん自身に環境の変化がなくても、例えば“兄弟が家を出ていく”“おばあちゃんと同居することになった”などの家族の変化でも、それが良いタイミングとなることもあります。
今回の過食症治療説明会で発表された、臨床心理士の福田俊介がご紹介する過食症解決の事例の中には、このような家族の変化がありました。
祥子さん(仮名)20歳 過食・抑うつ 対人緊張・マイペース
口数が多く甘え上手な姉が、新生活のため春から家を出ていくことになりました。
家に姉がいなくなると、祥子さんは以前より少しだけ、喋るようになりました。
そんな、とても良いタイミングでお母さんは淀屋橋心理療法センターに来所され・・・!?
続きはぜひ治療説明会で
新生活が始まる今、過食症の治療に一歩踏み出してみるのはいかがでしょうか。
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