2024年3月22日(金)
【家庭内暴力】
お子さんの暴力・暴言 に悩まれている親御さん向け治療説明会を開催しました。
家庭内暴力は、家庭内で継続的に行われる暴力行為のことですが、本稿では子どもから親や同居家族に対しての暴力行為とさせていただきます。
また、親や同居家族から子どもに対しての暴力のことを“児童虐待”、配偶者やパートナーから受ける暴力行為を“DV(ドメスティック・バイオレンス)”と、家庭内暴力と同じように家庭内で起こる暴力行為でも、暴力を振るう側と受ける側の立場の違いによって呼び方に変化があります。
家庭内暴力はその名の通り、家庭内で行われる暴力行為のため、その実態を外部の人間が把握することが難しい場合が多く、解決の難しい問題とされています。
今回は、解決が難しいとされている家庭内暴力について、お子さんの心理状況と問題解決のために必要なOK/NG対応についてお話します。
目次
家庭内暴力を呼び起こしているものは?
どうして暴力を振るうのか?
以前は穏やかな日常を過ごせていたのに、今は四六時中ピリついていて、些細なことでキレて暴れる。出口の見えない暴力行為。親御さんは、機嫌の良かったお子さんの面影を忘れてしまいそうなほど、心が擦り切れてしまっている状態かもしれません。
家庭内暴力に苦しんでおられる親御さんの多くが、「息子(娘)はどうして暴力を振るうようになってしまったのか・・・」と思い悩んでおられることでしょう。
「暴力を振るう原因がわかれば、子どもの暴力を解決できるかもしれない」
そう思って、原因を追求しようとする親御さんもおられます。
しかし、
どうして暴力を振るうのか?
どうしたら暴力を止められるのか?
どうしたら子どもの暴力から逃げることができるのか?
「親御さんの心がこのような感情にばかりとらわれてしまうと、
問題解決のために本当に注目しなければいけないことを見逃してしまい、
とても勿体無いのです」と、臨床心理士の福田俊介は言います。
お子さんは自分の中の不安や葛藤と闘っています
臨床心理士の福田俊介によると、実は、お子さんの心の中の不安や葛藤が家庭内暴力を引き起こしているという場合が多いのだそうです。
暴力を振るわれている親御さんやご家族の方からすれば、
「不安や葛藤があるなら、暴力行為として発散するのではなく、
家族や友人に相談することで解決すればいいのに・・・」
と理不尽に感じられるかもしれません。
けれども、お子さんは今、自分の感情のコントロールを上手にすることができない状態で、
お子さん自身もどうしたら良いのかわからない状態である可能性があります。
お子さん自身が、心の中の不安や葛藤を、暴力を振るうこと以外で解消・解決する方法を知らないだけなのかもしれません。
暴力以外の平和的方法で無理なく解消・解決できるようになれたなら、お子さんの暴力行為は治っていくはずです。
本当に注目すべきなのは、お子さんの暴力行為の方ではなく、
お子さんの心に溜まりに溜まってしまった不安や葛藤をどのようにして解消するかなのです。
家庭内暴力 どこに相談するの?
相談先を選ぶポイントは“お子さんの来所不要・具体的なアドバイス”
そうは言っても、お子さんに合った解決方法を見つけることはそう簡単にはいかないでしょう。
何から始めたら良いのか?
保護者(親御さんやご家族)だけで、解決方法を見つけられない場合、
どこに相談すれば良いのか?
相談先は、どうやって決めたら良いのか?
インターネットでなんでも検索できるようになった現在でも、ご家族やご自身に最適な相談先を見つけ出すのはなかなか大変なことですよね。
ポイント2:具体的なアドバイスを出してくれる
ポイント3:ワンポイントアドバイスだけではなく継続してアドバイスをくれる
もし、家庭内暴力についての相談先を探されたい場合は、以下のポイントを踏まえて探されるといいでしょう。
この3点はとても重要です。
ポイント1:お子さん(ご本人)が来所しなくても解決できる
まず、暴力を振るっている側のお子さん(ご本人)をカウンセリングなどに連れて行くのは至難の技ですよね。たとえ相談機関に連れて行けたとしても、カウンセラーの声に耳を傾けられる心理状態ではない場合が多いため、継続したカウンセリングは難しいでしょう。お子さんが来所しなくても問題を解決することができる機関であれば、親御さんのみでカウンセリングに通えるため、カウンセリングの予定も立てやすく、親御さんの精神状態も落ち着いた状態でカウンセリングを受けることができます。
ポイント2:具体的なアドバイスを出してくれる
また、お子さん抜きで相談ができたとしても、親御さんへの具体的なアドバイスがなければどうしようもありません。
家庭内暴力は、解決するのがとても難しい問題です。
お子さんの性格にピッタリ合った対応方法でないと、事態が悪化しかねません。
具体的なアドバイスをするということは、相談機関にとってとてもリスクが高いのです。
そのリスクをとってでも、お子さんへの具体的な対応方法を親御さんにアドバイスできる相談機関には、問題を解決してきた実績とノウハウがあるはずです。
「見守りましょう」
「できるだけ刺激しないように」などの曖昧なアドバイスではなく、
「こういう場合はこう対応しましょう」
「この子には、こういった話し方で接するのが良いでしょう」
「以前と比べて、ここが変わってきましたね!」など、
お子さんひとり一人の性格に合わせて、適切な対応方法を出してくれる相談機関なら、家庭内暴力解決に向けて前進できるでしょう。
ポイント3:ワンポイントアドバイスだけではなく継続してアドバイスをくれる
ワンポイントアドバイスだけではなく、家庭内暴力の解決まで継続してサポート、アドバイスをしてくれる所がいいでしょう。
淀屋橋心理療法センターの家庭内暴力・カウンセリング
当センターで、家庭内暴力のご相談をお受けする時に、どの親御さんにも大切にしていただいているのは、お子さんの機嫌の良いタイミングです。
「うちの子はずっとイライラしているので、機嫌の良い時間なんてありません」
当センターの勉強会やカウンセリングに来られた親御さんは、まずこうおっしゃる方がほとんどです。
けれど専門家の目から見てみると、どのお子さんにも、イライラせずに話せるタイミングやいつもよりも穏やかな受け答えをするタイミングが必ずあるのだそうです。
はじめは、針穴のようなほんのわずかなタイミングかもしれませんが、 そこを大切にしながら、ご本人と向き合うことで少しずつ機嫌の良い時間やタイミングが増えていくのだそうです。
勉強会では、どのようにして、機嫌の良いタイミングを見つけるのか、その時にどのような対応をしたら効果的なのかをカウンセラーがお話ししました。
家庭内暴力 どう対応したらいい?
OKな対応とNGな対応
突然ですが、ここで問題です。
ある日の昼過ぎ、珍しくリビングで穏やかに過ごしていたAさん(20代家庭内暴力の男性)
Aさんはマイペースで気難しい面があります
普段は自分からお母さんに話しかけたりしないのですが、
この日はポツリと一言、
「今日のコロナ患者が1000人になったらしい・・」と言いました。
お母さんは、何と答えるのが1番良いでしょうか?
①「それ、900人じゃなかったっけ?」
②「あー!それ知ってる知ってる!」
③「へー、そうなんだ!」
ヒント:Aさんは、自分のペースで話をしたいタイプです。
みなさん、答えがわかりましたか?
答えは③「へー、そうなんだ!」です。
一見、3択の中で一番お子さんの話に興味がなさそうな受け答えですよね。
①と②の受け答えでも、気分を害さずに話せる人はたくさんおられると思いますが、
敢えてここでは、①と②の答えは不正解(NG対応)としました。
それはなぜでしょう?
Aさんは、自分のペースで話をしたいタイプです。
例えば、①だと、お子さんは自分の小さな間違いを指摘されてイライラ・・・したり、
②の言葉を返してしまうと、「お母さん知っているんだ…しゃべる気なくした」
というように感じてしまう場合があります。
「へー、そうなんだ!」という言葉は、
Aさんは知っていることだけれど、お母さんは知らないということなので、
Aさんは、気分を害さずにお母さんへAさんの知っている情報を教えてあげることができます。
これは、Aさんという人の性格に合わせた対応方法の1例です。
たとえほんの一言だったとしても、お子さんの気質や性格に合った対応と合わない対応では、
その後のお子さんの反応が全く変わってしまう場合があります。
親御さんは良かれと思って、お子さんのちょっとした間違いを修正しようとしたり、私も知っているよ!と一緒に話そうとされることが少なくないと思います。
決して全てがNG対応というわけではありませんが、時には小さな間違いを修正せず、時には知っていることも知らないふりをしてお子さんの話を聞くということが、お子さんのイライラを引き起こさずに過ごすテクニックの1つになるのです。
当センターでは、お子さん一人ひとりの性格をじっくりと分析し、普段のご家庭での親御さんの対応方法などを伺うことで、お子さんの性格に合った対応方法を親御さんにお伝えしています。
家庭内暴力改善の兆候
お子さんの性格に合った対応をコツコツ積み重ねて行くと、暴力の改善の兆候が少しずつ見え始めます。
・イライラを長く引きずらなくなる
このようなことが現れ始めたら、お子さんが少しずつイライラの解決の仕方がわかってきている証拠です。
気持ちを緩めることなく、お子さんの性格に合った対応を続けていきましょう。
家庭内暴力の解決方法は暴力をどのようにして止めるかではなかった
家庭内暴力を解決するには、お子さん自身が、自分に合ったイライラの解決方法を見つけ出す必要があります。
そのためには、暴力自体をどのようにして止めるかではなく、お子さんひとり一人の性格に親御さんがどのように寄り添ってあげるかがとても大切です。
イライラを上手に解決できることは、暴力行為を減らすだけでなく、自身の衝動的な感情をコントロールすることにつながります。お子さんが今後、社会で生きて行く中で人間関係に悩んだ時にもきっと役に立つスキルになるでしょう。
お子さんが1番自分らしい生き方をご家族で見つけていく
家庭内暴力は、暴力を振るっているお子さん一人で解決できる問題ではありません。
お子さんのことを助けたいという親御さんの深い愛情があってこそ、お子さんは変わっていくことができます。
どのようにお子さんに接していけば家庭内暴力は解決するのか。
何が効果的で、何が問題なのかは、お子さんひとり一人に答えが異なります。
当センターでは、そんなお子さんひとり一人の性格に合った対応方法を、親御さんにお伝えできるように日々努力を重ねております。
親御さん向けの治療説明会もご活用ください
また、定期的に開催しておりますお子さんの暴力・暴言 に悩まれている親御さん向け治療説明会では、当センターで回復された事例をご紹介しながら、問題を解決する上で大切なことや、お子さんの性格に合った対応方法とは何なのか、親御さんはどうすればいいのかをお伝えしています。
先ほどもお伝えしたとおり、お子さんひとり一人に対応方法は異なりますので、残念ながら、治療説明会のみでお子さんひとり一人の家庭内暴力解決までの道筋をお伝えすることはできません。
ですが、少しでも親御さんの不安な気持ちが軽くなるように、お子さんのためにできることを何か一つでもお伝えできるようにカウンセラーとスタッフで日々試行錯誤しております!
家庭内暴力解決の先に、お子さんが1番自分らしくイキイキと人生を歩んでいけるように、少しでもお手伝いができますように。
家庭内暴力治療説明会にご興味のある方はこちらをチェック
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◆ 【家庭内暴力】関連著書のご紹介 ◆
淀屋橋心理療法センターの所長であり、医師の福田俊一の著書をご紹介します。数多くの臨床経験から、ご家庭の問題解決のヒントをお伝えしています。治療説明会に来られる方からも「本を読みました」と、嬉しいご感想などもいただいています。
タイトル
しぐさでわかる心の病気
あらすじ
心の病気は早期発見、早期治療がなにより大切
「もっと早く子どもの、夫の心の病気に気づいていれば、なんとかなったのに」と、母親であり妻であるあなたにぜひ読んでいただきたい。心の病気がしぐさでわかる本です。サラリ-マンでストレスいっぱいのお父さんにも、自己診断のスケールになる本です。