発達障害による感覚過敏をカウンセリングで治す

発達障害による感覚過敏をカウンセリングで治す

2024年6月17日(月)、淀屋橋心理療法センターにて、「発達障害を考える家族療法の治療説明会」を開催しました。

少子化問題が叫ばれ、子どもの数が減っていく中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けています。ご自分のお子さんが発達障害の診断を受けた、または発達障害の疑いがあると言われてお悩みの親御さんも多いことと思います。

今回の説明会で当センターの精神科医・福田俊一、臨床心理士・福田俊介がお話しした内容の中から、発達障害による感覚過敏の症状が治った事例と、WISC(ウィスク)知能検査についての話をご紹介します。

「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けています。:カウンセリング(発達障害)

カウンセリングによる感覚過敏の治療

一般的な感覚過敏への対応:カウンセリング(発達障害)

一般的な感覚過敏への対応

発達障害の症状の一つとして「感覚過敏」があります。
感覚過敏とは、触覚・視覚・聴覚・嗅覚など特定の感覚に対して過剰に反応してしまうことです。
感覚過敏への一般的な対処として、環境を整えるということが挙げられます。
例えば視覚が過敏なら照明の明るさを抑えたり、サングラスをかけて光による刺激を調節したりする。聴覚が過敏なら部屋に防音対策を施したり、イヤホンや耳栓を使用したりするといった方法です。

淀屋橋心理療法センターの感覚過敏への対応

当センター所長の福田俊一は、「このお子さんは伸ばすことができる」と判断した場合、前述のような対処的な方法を使わなくても解決できるように持っていきたいと考えています。

当センターでは、カウンセリングを通してお子さんへの接し方のコツを掴んでいただきます。
カウンセリングにはお子さんの来所は不要で、親御さんとのカウンセリングのみで治療していくのが当センターの特徴です。

お子さんにはそれぞれ、一人ひとり持って生まれた個性がありますが、その個性を細かく分析し、どの部分を伸ばせば感覚過敏の症状が良くなるかを見極め、親御さんとのカウンセリングを通して集中的にそこに働きかけます。そうすることで感覚過敏の症状が治っていくことがよくあるのです。

カウンセリングで感覚過敏が治った事例

カウンセリングで感覚過敏が治った事例:カウンセリング(発達障害)

今回の説明会では、カウンセリングで発達障害による感覚過敏が改善した、当センターの事例をいくつかお話しました。その中からひとつ、ある小学生の男の子の事例をご紹介します。

感覚過敏で同じ下着しか履けない

小学6年生のA君は、発達障害による感覚過敏(触覚過敏)と強いこだわりがあり、同じ下着しか履くことができませんでした。新しいパンツを履かせようとするとパニックを起こして大騒ぎするので、親御さんは毎日まいにち、同じパンツを洗濯しては乾かし、ボロボロになっても破れたところを縫って修繕して、A君に履かせていました。

たかがパンツ、されどパンツ。
他人から見たら「それは大変ね」という軽い話で済むことかも知れません。しかし、実際に365日パンツに振り回される親御さんのストレスと、お子さんの将来への不安は相当なものだったでしょう。

「雨が降ってパンツが乾かなかったらどうしよう」
「パンツのことが原因で、学校でいじめられたらどうしよう」
「大きくなっても感覚過敏は治らないの?」
「就職は?恋愛は?結婚はできるの??」

カウンセリング開始から半年で感覚過敏が改善

親御さんには定期的にカウンセリングに通っていただき、カウンセラーのアドバイス通りにA君に対応してもらいますが、これは一朝一夕にできることではありません。それでも親御さんが四苦八苦しながら接しているうちに、A君に変化が現れ、だんだんと感覚過敏やこだわりが薄れてきたのです。

そしてカウンセリングを始めて半年後には、同じ下着しか履けなかったA君が、新しい下着を履けるようになりました。今までA君は新しい服を着るのも嫌がっていたのですが、中学校に進級して、首の詰まった制服を着ることもできました。
これには親御さんも、「学生服が着られるかどうかずっと気にしていたのですが、着ることができてよかったです」と、とても喜んでおられました。

学生服が着られるかどうかずっと気にしていたのですが、着ることができてよかったです:カウンセリング(発達障害)

発達障害だからとあきらめないで

感覚過敏の中でも、A君のような触覚過敏が治った事例だけでなく、物音に過剰に反応してしまう聴覚過敏がカウンセリングによって改善した事例もあります。
いずれの場合も症状そのものには直接アプローチをせず、親御さんへのカウンセリングを通して子どもさんの持つ“伸びる芽”に働きかけます。親御さんがその方法に習熟することで、お子さんが生き生きと成長し始め、感覚過敏やこだわりが改善していくのです。

たとえお子さんが「発達障害」と診断されたとしても、「感覚過敏やこだわりは、発達障害の特性だから治らない」とあきらめないでください。お子さんを適切に伸ばしていくことで、症状を改善していける場合があるのです。

発達障害の定義

近年「発達障害」という概念は広く知られるようになりました。
厚生労働省では、発達障害を「脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上における機能障害が発達期にみられる状態」と定義しています。 発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読字・書字障害、算数能力の特異的障害などが含まれます。また、多動性障害は、通常低年齢で発現する脳機能の障害として政令で定められています。

WISC(ウィスク)知能検査が示すもの

WISC(ウィスク)知能検査:カウンセリング(発達障害)

子どもの発達状況を把握するための検査に、「WISC(ウィスク)」という5歳0ヶ月から16歳11ヶ月の児童を対象とした知能検査があります。「言語理解」「知覚推理」「処理速度」「ワーキングメモリー」の4つの指標とIQ(知能指数)を数値化する検査で、その子の「得意なこと・苦手なこと」を知り、その子にとって「より良い支援の手がかりを得る」ことを目的として行う検査です。

WISC知能検査の結果だけで発達障害かそうでないかの判断ができるわけではありませんが、診断材料のひとつとして用いられています。

このWISC知能検査は、公認心理師や臨床心理士などの資格を持つ専門家が検査者となることが多く、受検者である子どもと1対1で行われます。時間制限はなく、大体60〜90分、長くて2時間程度かかることもあります。

子どもからしてみれば、検査する相手は初めて会う大人かもしれません。検査する会場は初めて行く場所かもしれません。当然、緊張したり、集中できなかったり、途中で疲れてしまったり、気分が乗らず本来の力を発揮できない場合も多々あるでしょう。

検査の結果よりも大切なこと

今回の説明会の中でも、とても表現力豊かに会話をするお子さんが、WISCを受けた結果IQや「言語理解」の数値が低かったという事例が紹介されました。会話の記録から見えるお子さん像とWISCの数値から見えるお子さん像では、かなりのギャップがあるように感じられます。

知能検査や発達検査を受けて、その結果にショックを受ける親御さんもおられますが、検査の数値がお子さんの能力のすべてを表しているわけではありません。
数値だけにとらわれて、「この子はあれができない・これができない」と決めつけてお子さんの“伸びる芽”を摘んでしまわないで欲しいのです。

重要なのは、お子さんが困り事を乗り越える力をつけ、自信を持って能動的・主体的に自分を出せるように成長させてあげることではないでしょうか。まずそのためには、お子さんが生き生きと自分の考えを話せるように、親御さんが会話を上手に引き出してあげることが必要です。
淀屋橋心理療法センターでは、カウンセリングによってそれを実現していきます。

発達障害の症状をカウンセリングで治療する

発達障害の症状をカウンセリングで治療する:カウンセリング(発達障害)

一般的には発達障害の症状によって薬が処方されることもありますが、淀屋橋心理療法センターでは薬を使わずに、カウンセリングだけで治療を行います。
一体どうやってカウンセリングによって発達障害の症状が改善していくのか、イメージがわかないという方もおられるかもしれません。当センターでの家族療法カウンセリングについてご紹介したいと思います。

カウンセリングで良い効果を出すには

当センターのカウンセリングでは、お子さん本人の来所は不要です。お子さんを伸ばすにはどのように接していけば良いかのコツを親御さんにお伝えし、親御さんの関わりを通してお子さんの治療をしていきます。
当センターの臨床心理士 福田俊介は、カウンセリングによる良い効果を出すためのポイントは二つあると言います。それは、「お子さんへの声掛けと話の聴き方」と「親の心の状態」です。

お子さんへの声掛けと話の聴き方

一つ目の「お子さんへの声掛けと話の聴き方」は技術的な部分です。
親御さんが声掛けや話の聴き方のコツを掴めるようにカウンセラーがアドバイスをします。最初はうまくいかなくても、丁寧にお伝えしますので、多くの親御さんがうまく対応できるようになっていかれます。

親の心の状態

二つ目の「親の心の状態」も重要なポイントです。
親御さんがイライラしているとうまく効果が出ないばかりか、お子さんの良い変化に気づけないことがあります。親御さんの心の状態が安定していることは治療にあたって重要です。 また、治療は一進一退を繰り返しながら、徐々に前に進んでいくものです。思うようにいかない時も信じて焦らず対応していただくことや、反対にうまくいっている時も油断せず対応していただくことが必要です。

淀屋橋心理療法センターのカウンセリング

淀屋橋心理療法センターのカウンセリング:カウンセリング(発達障害)

オンラインカウンセリングや事前相談も

当センターのカウンセリングは、対面によるものとオンラインによるものがあり、どちらでも対応可能です。遠方にお住まいの方やお家を空けられない方にはオンラインカウンセリングが便利です。

対面の場合は、本格的なカウンセリングを開始する前の事前相談も受け付けています。カウンセラーがお子さんについて丁寧に聞き取りをして、どのように伸ばすことができるか判断いたします。しっかりと親御さんにご納得いただいてからカウンセリングを開始していただけます。

発達障害の治療説明会のご案内

当センターでは、専門のカウンセラーが一緒に考え、問題解決のお手伝いをいたします。
「発達障害を考える家族療法の治療説明会」も定期的に開催していきますので、ご活用ください。
開催の日程等は、HPや淀屋橋心理療法センター公式LINEでお知らせいたしますので、登録をしていただければ便利です。淀屋橋心理療法センター公式LINEでは、その他様々な講演会のお知らせや、HP最新記事のお知らせなども配信しております。

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2024.07.04  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》冨田あかり

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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