養護教諭(保健室の先生)の悩みとは?
保護者や教職員の方々にも届いて欲しい思い

養護教諭(保健室の先生)の悩みとは?保護者や教職員の方々にも届いて欲しい思い

2024年3月30日(土)
保健室の先生向けセミナー
〜困難に直面している生徒さんとより良く向き合うために〜を開催しました。

保健室の先生向けセミナー

たくさんの児童が通う学校では、不登校・いじめ・摂食障害・ゲ―ム依存・自傷行為(リストカット)など、子ども達が抱える悩みも様々でしょう。保健室の先生方は、子ども達が抱えている悩みを解決すべく、日々奮闘されていらっしゃると思います。

当センターには日々、親御さんからお子さんが直面している困難についてのご相談がたくさん寄せられており、様々なお子さんの悩みや問題を解決してきた経験があります。
少しでも、現場で奮闘されている保健室の先生方のお力になりたい!
そんな思いから、本セミナーを開催致しました。

《 セミナープログラム 》

1. ケース紹介
講師:淀屋橋心理療法センター/臨床心理士 福田俊介
接し方を工夫することによって解決したケースをご紹介します
【ケース1】発達障害グレーゾーン 不登校・ゲ―ム依存の高校生の男の子
【ケース2】リストカットがやめられない中学生の女の子

2. 家族の持つ潜在的問題解決力の凄さと、養護教諭にできること
講師:淀屋橋心理療法センター所長/精神科医師 福田俊一
① コミュニケーションの3段階
② 長期目標を考える
③ 生徒の性格を知る
④ 症状ごとの傾向について
⑤ 横の連携・時間の連携

3. 精神科医師 福田俊一のQ & Aコーナー
先生方からの一つ一つの質問にお答えします!

精神科医師:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

カウンセリングルームのような保健室

保健室:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

悩める子ども達のカウンセラー 子どもの心をケアする保健室の先生

こども家庭庁の発表によると、令和4年度の小中学校における不登校児童生徒数は299,048人(前年度比22.1%増)、小・中・高等学校におけるいじめの認知件数は681,948件(前年比10.8%増)。児童生徒1,000人あたり53.3件のいじめが報告されているそうです。
(参考:こども家庭庁)

不登校といじめだけでも、こんなにもたくさんの子ども達が悩み苦しんでいて、その数は年々増え続けている・・・本当につらくて悲しいことです。

保健室は体調不良や怪我の手当をする場所でもありますが、悩みを抱える子ども達の心のケアをする役割も担っています。保健室の先生は子ども達にとってカウンセラーのような存在なのかもしれません。

保健室の先生:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

子どもの悩みはそれぞれ違う パターン化できないからこその対応の難しさ

学校に通うたくさんの子どもたちの悩みは十人十色。

セミナーに参加してくださった保健室の先生のお話しによると、「この悩みにはこう答える・こうアドバイスする」などと、対応方法をパターン化することは難しいそうです。子どもたちが学校にいる限られた時間の中で、ひとり一人の悩みに臨機応変に対応されている保健室の先生、本当にすごいなと思いました。

学校という集団の中で、周りとの調和も考えながらひとり一人の気持ちを尊重して対応されるのはとても大変なことだと思います。

保健室の先生の葛藤 セミナーで語られた3つの悩み

保健室の先生の葛藤 セミナーで語られた3つの悩み:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

今回のセミナーでは、現場で奮闘されている保健室の先生だからこそのお悩みもたくさんお聞きすることができました。その中でも、セミナーで語られた3つのお悩みについてご紹介させていただきます。

悩み1:子ども達の抱える問題をスピード解決するのは難しい

担任の先生や保護者からの依頼で、悩みを抱える児童から事情を聞くことの多い保健室の先生。

たくさんの児童が集まる学校では、限られた時間の中で子ども達の悩みを解決していかなければいけません。そのため、問題の解決にもスピード感を求められる場合も少なくないそうです。

子ども達の抱える悩みは、生きづらさや人間関係の悩みなど、様々なことが複雑化してしまった状態で起こっていることが多く、スピード解決は難しい場合がほとんど。実際は複雑に絡み合った紐を解いていくように、じっくりと子ども達と向き合う必要があります。

子ども達の抱える悩み:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

実は、当センターでも、お子さんの抱える問題を根本解決するために、カウンセリングに来られた親御さんに以下のようなお願いをしているのです。

・治療を軌道に乗せるのに3ヶ月頑張っていただくこと
・その後何ヶ月かは親御さんの気持ちを緩めずにお子さんと向き合っていただくこと

※当センターは、お子さんに対して直接アプローチするのではなく、親御さんへお子さんの性格に合った対応方法をアドバイスすることで問題を解決していくという治療方法をとっています。そのため、親御さんの治療への覚悟なしにカウンセリングを進めることができないため、このようなお願いをしています。

精神科医師:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

1人のお子さんの問題に対して、専門家がじっくり時間をかけてカウンセリングを行ったとしても、問題を根本から解決するためには、最低でも数ヶ月という時間がどうしても必要になります。

問題が再発することなくスピード解決できるのなら、それに越したことはありません。ですが、短期間で問題が根本から解決できるということはなかなか難しいのです。一見、スピード解決できたように見えていても、十分な問題解決に至っていないことはよくあります。

問題が十分に解決されていなければ、その後も同じような問題で子ども達は生き詰まり、不登校などが再発してしまうでしょう。

そういう意味では、はじめからじっくり時間をかけて解決に臨んだ方が、結果的に短い期間で問題を根本解決できるのかもしれません。

学校として、問題のスピード解決よりもじっくりと根本解決していくことを大切にするのは難しい課題ではあると思います。ですが、保健室の先生だけでなく、教職員や保護者の方々にも“子ども達の抱える問題を早く解決することが大切なのか、再発しないようにじっくり解決することが大切なのか”を意識してもらうだけでも、学校での問題解決への取り組み方が1歩前進するのではないかと思いました。

悩み2:「保健室の先生は、子ども達と雑談しかしてないの?」

保健室の先生によると、悩みを抱えて保健室を訪れる子ども達は、考え方の癖が強かったり、気を使いすぎて無理をしすぎている子など、自分一人ではどうにも解決できない“生きづらさ”を抱えている場合が多いのだそうです。そんな生きづらさを少しでも理解できるように、保健室の先生は子ども達と対話をします。

そのほとんどが他愛もない雑談だったりします。これは子どもの心を理解するためにとても大切な雑談です。

保健室の先生は子ども達と対話をします:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

悲しいことに、この大切な雑談が理解されないことが多く、
心無い先生からは「しゃべっただけなの?それだけ?」と言われてしまうこともあるそうです。

当センターでは雑談こそ、問題解決のために大切なことだと考えています。

雑談は、保健室の先生が子ども達の心を理解したり、心の距離が近くなったりするだけではありません。子ども達自身が好きなことや話したいことを自由に話している中で、自分の考え方の癖に気付けたり、心の中が整理されていったりする効果もあるのです。

“雑談することの大切さ”が、学校内でも広まっていって欲しいなと感じるお悩みでした。

悩み3:子どものプライバシーを守るのか、保護者への説明責任を果たすのか

家族の前での自分、職場での自分、友人の前での自分・・・大人にもたくさんの顔がありますよね。それと同じように、子ども達にも、家族・友人・クラス(教室)・保健室など、それぞれの人間関係の中でたくさんの顔を持っています。

家族にしか話せないこともあれば、家族にはなかなか話せないけれど、保健室の先生だから勇気を出して話せることもあります。

大人の事情からすれば、保健室で子ども達から聞いたことは包み隠さず担任や保護者に話して欲しいと思われる方もいらっしゃるでしょう。

子どものプライバシーを守るのか、保護者への説明責任を果たすのか:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

けれど、保健室での話を担任や保護者に共有した場合、「保健室の先生だからやっと話せたのに・・・」と裏切られた気持ちになって、せっかく開いた心を閉ざしてしまうお子さんもいるそうです。

子どもは子どもなりに、自分のプライバシーを守りたいのです。

保健室の先生は、保護者への説明責任と子ども達の気持ちの狭間で日々、悩まれているそうです。その事実を、保健室の先生から直接お聞きすることができたのは、本当に貴重なことでした。

保健室の先生・保護者の皆様へ
カウンセリングの現場からお伝えできること
– 臨床心理士 福田俊介によるケース紹介 –

カウンセリングの現場からお伝えできること:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

淀屋橋心理療法センターでは、親御さんを対象に、お子さんの問題解決のためのカウンセリングを行なっております。その中でも、学校で起きやすい問題について解決したケースを先生方にご紹介しました。保健室の先生や保護者の皆さんのご参考になれば幸いです。

【不登校・発達障害・ゲ―ム依存】 高校生の男の子のケース

カウンセリングの現場からお伝えできること:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

中高一貫の進学校に通う高校生のユウジくんは、発達障害グレーゾーン
普段はとても優しい性格ですが、
好きなことは夢中になってやれるけれど、
興味のないことは全くやりたがらないという気質もありました

そんなユウジくんは、ある日から学校を遅刻欠席するように・・・
出席日数が足りなくなってしまえば、留年してしまうにも関わらず、
課題やテスト勉強をしたがりません

「勉強しないと留年しちゃうよ」と親御さんは促しますが
「僕は生きている意味がわからない」と言い、前に進むことができません

勉強をせずにどんどんゲームに夢中になっていってしまうユウジくん
そんな姿を見ていられなくなった親御さんは、ユウジくんからゲームを取り上げますが、
ユウジくんは親御さんから盗んだお金でゲームを買ってしまいます

ユウジくんにどう接したら良いのかわからなくなってしまった親御さんは、
当センターへ相談に来られます

カウンセラーは、
普段は優しくて良い子のユウジくんのこだわりすぎてしまう性格に注目し、
親御さんにユウジくんの性格に合った対応方法をアドバイスします

親御さんが実践していくと、
頑なだったユウジくんに少しづつ変化が現れてきて・・・

【リストカット・不登校】 中学生の女の子のケース

中学生の女の子のケース:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

学校では頑張ってニコニコしていた、心配性で繊細な性格のマキさんは、
悩みがあっても親御さんに甘えたり、相談をしてくれません

マキさんが、不安なことや本音を話そうとしてくれないことを
お母さんはとても悲しく思っていました

ある日から、マキさんは学校に行けなくなり、
月に2〜3回リストカットしていることも判明します

朝もだんだんと起きられなくなってしまったので、
親御さんがマキさんを起こしに行くのですが、毎回大喧嘩…

そんな現状を改善するために、
親御さんは当センターへ相談に来られました

カウンセラーはマキさんの性格を分析し、
マキさんの性格に合った対応方法を親御さんにアドバイス・実践してもらいます

「リストカットするかもしれない・・・」という不安に親御さんがとらわれすぎて、
マキさんの治ってきている兆しを見逃さないようにカウンセラーがサポートしていくと、
リストカットの回数が減っていき・・・

問題解決のポイントは“元気になった”をゴールにしないこと

問題解決のポイントは“元気になった”をゴールにしないこと:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

ケース紹介では、不登校・発達障害・ゲ―ム依存・リストカットをキーワードとして、子どもたちが抱える悩みやご家庭の問題を解決するまでを細かくお話ししました。

ケース紹介後、臨床心理士の福田からの提案で、先生同士で2つのケースについて意見交換していただきました。その一部をご紹介します。

どちらのケースも、 問題を解決することができたのは、
子どもが良くなってきたところで親御さんが油断しなかったから。
しっかりと治りきった! (問題が解決できた)と
カウンセラーが判断できるところまで、 親御さんが頑張れたからだと思います

“元気になったをゴールにしない”が、
カウンセリング治療ではとても大切なことがわかりました

( ご参加いただいた先生方のご意見より )

様々なご意見をお伺いする中で、ほとんどの方から参考になったと言っていただけたのが、“子どもが元気になった”をゴールにしないという福田の言葉でした。

精神科医師:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

元気というのには波があります。
昨日機嫌が良く元気でも、今日も同じとは限りません。

楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、ムカつくこと
お子さんの日常には様々な出来事があり、毎日同じではないですよね
その同じではない日常で、お子さんの気分は簡単に左右されてしまいます。

不登校やいじめなどで悩みを抱えていた子が
元気に過ごせるようになってくれば、
「最近、元気な日が続いているから、うちの子はもう大丈夫!」
と思われる親御さんは少なくありません。
そう判断されたいお気持ちはとてもわかります。
けれども、そこをグッと我慢していただきたいのです。

なぜなら、カウンセリングでお子さんが元気になってきたとしても、
その後の日々の中にも、
お子さんにとって傷つく出来事は起こり得るから。

元気なだけでは無く、成長しているか

傷つく出来事が起こってしまった時、
お子さんがどう対処するのか
傷ついた気持ちとどう向き合うのか

ここがとても大切なのです。

“元気になったからもう大丈夫”と親御さんが判断して、
カウンセリングをストップされた結果、
その後に起こってしまった辛い出来事が原因で荒れてしまい、
カウンセリング前の状態に戻ってしまうお子さんを多く見てきました。

そのようなお子さんを少しでも少なくできるように、
親御さんには“元気になった”をゴールにしないで欲しいのです。

( 臨床心理士 福田の言葉より )

不登校、自傷行為、いじめ・・・ 子どもの悩み解決のために

不登校、自傷行為、いじめ・・・子どもの悩み解決のために:カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

セミナーでは、当センターのカウンセラーやスタッフが、ご参加いただいた保健室の先生の現場の声をお聞きしながら、子ども達の抱える悩みや問題について、先生方や親御さんがどのように捉えたら解決に繋げていけるのかという点を重点的にお話ししました。

子どもといえども、抱えている問題や悩みには、学校での人間関係・今まで蓄積してきた過去の経験・自分自身でもどうしようもない生きづらさなど、様々な事情が絡み合っていることがほとんどです。

これらを少しずつ紐解いていかないことには、根本解決はできません。

その方法の1つとして、子ども達との雑談を大切にすること“元気になった”を問題解決のゴールにしないことなどは、保健室だけでなく、ご家庭でもとても有効な考え方だと筆者は感じました。

親御さん向けの治療説明会もご活用ください

カウンセリング(保健室の先生向けセミナー)

当センターでは、保健室の先生向けだけでなく、親御さん向けの治療説明会も定期的に開催しております。親御さん向け治療説明会でも、当センターで回復された事例をご紹介しながら、問題を解決する上で大切なことや、お子さんの性格に合った対応方法とは何なのか、親御さんはどうすればいいのかをお伝えしています。

お子さんひとり一人に対応方法は異なりますので、残念ながら、治療説明会のみでお子さんひとり一人の問題解決までの道筋をお伝えすることはできません。

ですが、少しでも親御さんの不安な気持ちが軽くなるように、お子さんのためにできることを何か一つでもお伝えできるようにカウンセラーとスタッフで日々試行錯誤しております!

問題解決の先に、お子さんが1番自分らしくイキイキと人生を歩んでいけるように、少しでもお手伝いができますように。

親御さん向け治療説明会にご興味のある方はこちらをチェック

《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》原田友美

◆学校の先生向けセミナーを開催いたします ◆

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記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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