拒食症のカウンセリングを有効に活用するコツ

拒食症のカウンセリングを有効に活用するコツ

拒食症のお子さんを持つ親御さん向けの治療説明会が10月15日に行われました。

今回、淀屋橋心理療法センターのスタッフ戸塚が説明会に参加された親御さんのディスカッションで、ファシリテーター(ディスカッションの進行係)をさせて頂き、その中で感じたことを書かせて頂きます。

摂食障害の中でも、拒食症のお子さんのお悩みの大きな特徴は、拒食症によって体重が大きく減ることにより体が必要とする栄養が足りず、さまざまな健康問題が起こり、そのことによって命に危険が及ぶ可能性があるということです。

目の前にいる大切な我が子が、日々少しずつやせ細ってゆく姿を見ながら、自分に何かできることはないかと考え続ける日々は、親御さんにとっては心が張り裂けそうなほどつらいものだと思います。

拒食症のお子さんについて親御さんのお悩み

拒食症のお子さんについて親御さんのお悩み:カウンセリング(拒食症)

今回の参加者の親御さんの中にも、拒食症のお子さんの体重が少なすぎるために入院されている方がおられ、「体重が増えて退院してきても、我が子にどのような対応をしていいのかがわからない」と、話される方がおられました。

せっかく体重が増えて退院してきたとしても、わが子が痩せることにこだわっていては、親御さんとしても心配ですよね。

他にも、子どもに「食べたいのに食べられない」と言われ、親御さんとしても、どう接していけば良いのか困っておられる方もおられました。

お話を聞いていて、親御さんそしてお子さんが、毎日食べることに頭を悩まされている様子が伝わってきました。

拒食症のカウンセリングを有効に利用する方法

拒食症のカウンセリングを有効に利用する方法:カウンセリング(拒食症)

そこで、少しでも淀屋橋心理療法センターで拒食症のカウンセリングを有効に利用していただくために、拒食症治療の失敗例と成功例を図にしてみました。

拒食症治療の失敗例

【図1】:親御さんが拒食症の事を心配するあまり
心配に気持ちが向いてしまいお子さんに背を向けた状態の図

親御さんが拒食症の事を心配するあまり心配に気持ちが向いてしまいお子さんに背を向けた状態の図:カウンセリング(拒食症)

【図1】で、親御さんにとって、お子さんの心配事に意識が向いているのはとてもよくわかるお話なのですが、ここに、お子さんが向いている方向も表しました。

Q&Aの中で、所長で精神科医師の福田俊一が、お子さんは拒食症という宗教のようなものにハマっていると説明があり、お子さんが痩せることに囚われているという図です。

【図1】のような状態では、親御さんはお子さんよりも不安ばかりに向き合い、
お子さんは痩せることにハマった親子の間に壁が立ちはだかっている様な状態になっているとイメージしてください。

親御さんがお子さんに向き合うことでお子さんは少しずつ拒食症から離れていきます

臨床心理士福田俊介は、図1のように親御さんが不安や心配ばかりに意識が向いている状態で、お子さんが痩せることにこだわっている状態では、お子さんを変えるのは難しいといいます。

お母さんの意識が不安ばかりに向いていては、お子さんの拒食症を変えるのが難しいです。:カウンセリング(拒食症)

ではどの様にすればいいのでしょうか?

お子さんがどんどん体重が減っていく状況の中、親御さんに【図2】のような方向に向いていただくことはとても難しいことかもしれませんが、

頭の中で【図2】の様な状況をイメージしてお子さんに対応していただけたらと思います。

拒食症治療の成功例

【図2】:親御さんがお子さんの言葉に向き合うことにより
親子の間に立ちはだかった壁がどんどん小さくなっていく図

親御さんがお子さんの言葉に向き合うことにより親子の間に立ちはだかった壁がどんどん小さくなっていく図:カウンセリング(拒食症)

拒食症を克服するために、淀屋橋心理療法センターが最も重要視している部分。

それは、《生きづらい生き方をしているお子さんが、本人がまだ気付くことができていない生きやすい生き方》を、いかにはやく見つけることができるかということです。

最初は親も子も背を向けた状態ですが、まずはお母さんがお子さんのことに興味を持ち始めると、【図3】のようにお子さんがお母さんの方に向き始めます。

ここで本格的な治療のスタートラインに立ったことになり、
お母さんとお子さんの会話が噛み合ってゆき、お子さんの力がぐんぐん伸びていくのです。

お子さん自身が自分の好きなものがわかり、自分は何を言いたいか、どうしたいのかをお子さん自身の言葉で表現できるようになると、親御さんに背を向けた状態もどんどん変わってゆきます。

このかたちになるまでには、親御さんがコツコツとお子さんの言葉と向き合う時間がとても必要になりますが、お子さんが親御さんに自分の言葉で話すことができるようになってくるといよいよ治療の本番です。

お子さんの持ち味がうまく花開くように援助していきましょう。

そして、しつこく努力しているとさすがの拒食症も薄れていきます。

お子さん本人が生きやすい道を見つけると、拒食症から過食症になってしまうということもありません。

言葉では簡単ですし実際に行うとなると、とても根気のいることですが、
【図3】を頭の中でイメージしていただいて、
カウンセリングを少しでも有効に活用していただきたいと思います。

【図3】:親御さんがお子さんにしっかりと向き合うことで、
お子さんも親御さんと話す事も増え親子の間の壁がなくなってゆく図

親御さんがお子さんにしっかりと向き合うことで、お子さんも親御さんと話す事も増え親子の分断はなくなってゆく図:カウンセリング(拒食症)

拒食症のカウンセリングを受けるかどうか悩まれている親御さんへ

拒食症のカウンセリングを受けるかどうか悩まれている親御さんへ:カウンセリング(拒食症)

親御さんの中で説明会の帰り際に、スタッフに福田の話した内容について熱心に質問してこられていた方がいらっしゃいました。

説明会となると、他の親御さんの話を聞く良い機会にもなりますが、逆に発言や質問しづらいこともあるのではないかと思いました。

もし、まだ疑問を持たれている、気になるところがある、もっと話を聞きたいと思われた親御さん。

当センターはカウンセリングを受ける前の段階で、来所いただけるかたのみですが事前相談を設けています。

事前相談では個別でお話をお聞きできますので、疑問に思われたことなど質問していただけたらと思います。

この度は、当センター主催の拒食症のお子さんを持つ親御さん向けの治療説明会に多数ご参加いただきありがとうございました。

淀屋橋心理療法センター拒食症のページ
https://www.yodoyabashift.com/symptom/anorexia/

説明会過去のレポート
https://www.yodoyabashift.com/report/

2024.11.18  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》戸塚光子

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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