日本認知・行動療法学会 第50回記念大会 摂食障害・過食症事例発表レポート

日本認知・行動療法学会 第50回記念大会 摂食障害・過食症事例発表レポート

2024年9月23日(月・祝)
淀屋橋心理療法センター臨床心理士の福田俊介が
日本認知・行動療法学会第50回記念大会にて事例発表をしました。

日本認知・行動療法学会第50回記念大会:カウンセリング(過食症)

摂食障害は10代〜20代に多いと言われています。しかし近年、“やせている体型”に憧れを持つ年齢層が低年齢化し、小学校低学年でも摂食障害を発症するケースが少なくありません。

また、それとは反対に、結婚や出産後、子育て世代にも摂食障害は広がってきています。

摂食障害は、初発年齢の低年齢化と⻑年摂食障害に悩まれている方の高年齢化の両方が進んでいると言えるでしょう。

国立国際医療研究センターの発表によると、1998年に20代前半だった入院患者の平均年齢が2008年には30代前半に上昇しており、特に神経性無食欲症の中でむちゃ食い・排出型(嘔吐や下剤の服用などを伴う過食症)の患者の平均年齢は上昇傾向にあるのだそうです。(参考:国立国際医療研究センター)

今回の学会発表では、過食症に悩む30代女性とその母親にスポットをあて、過食費用の推移などの資料とあわせて、カウンセリングの効果についてお話ししました。

臨床心理士福田俊介:カウンセリング(過食症)

【学会発表テーマ】30代過食症女性とその母親への親子面接淀屋橋心理療法センター臨床心理士福田俊介:カウンセリング(過食症)

カウンセリングの効果と過食費用の関係

学会発表では、カウンセリングによって現れた効果について、さまざまなデータを用いてお話ししました。そのデータの一つが、過食費用の推移(過食に使う費用がどのように変化したか)についてのグラフです。治療中のお子さんのおかれた状況と過食量の推移の関係を整理し、全体像を把握するために大切な資料の1つであると言えます。

そして、お子さんの過食症をなんとか治してあげたい親御さんにとって、治療の経過と過食費用の関係はとても気になる部分ではないでしょうか。

治療開始から完治までの過食費用の推移について、Aさんの場合はどうだったのかを、学会で使用したグラフをもとに簡単にご紹介していきますね。

※自宅にある食べ物で過食している、親御さんに買わせている、過食費用が捻出できないので万引きを繰り返して食べ物を確保している…等、過食の方法は人それぞれです。治療の経過や過食費用の推移などには、個人差がありますことをご了承ください。

カウンセリング開始から約3ヶ月の過食費用の推移

カウンセリング開始から約3ヶ月の過食費用の推移:カウンセリング(過食症)

過食症は、発症してから何年も苦しんでおられる方が多く、それだけに根の深い問題です。

“治療”というと、開始してすぐに劇的な変化を求められる親御さんも少なくありませんが、過食症治療に大切なのは、“土台作り”。まずは、お子さんが過食症から解放される道筋(土台)をコツコツ作っていく必要があります。

グラフの推移を見ても、治療開始3ヶ月はほとんど変化が見られませんよね。

この期間はグッと我慢していただいて、過食症治療の土台をしっかりと作っていく期間です。

土台がしっかりと出来上がると、その後、どのように変化していくでしょうか?

カウンセリング開始から約7ヶ月の過食費用の推移

カウンセリング開始から約7ヶ月の過食費用の推移:カウンセリング(過食症)

カウンセリング開始から約7ヶ月、少しずつですが過食費用が減ってきました。

土台ができたとしても、初めのうちは大きな変化が見られないことが多いのですが、カウンセラーとこまめにお子さんの変化を確認し、対応を調整していくことで、確実に治療効果は高まります。

カウンセリング開始から約1年2ヶ月の過食費用の推移

カウンセリング開始から約1年2ヶ月の過食費用の推移:カウンセリング(過食症)

※グラフの詳細をご覧になりたい場合:
スマホ等のモバイル端末で画像を拡大してご覧になるよりも、PC等の大きな画面で閲覧していただく方がご覧になりやすいかもしれません。

カウンセリング開始から約1年2ヶ月、過食費用が0(ゼロ) になり、過食をしない日常が安定してきます。Aさんの場合、カウンセラー指導のもとで、Aさんとお母さんが適切なトレーニングをしたことが、過食症の改善に大きな役割を果たしました。

過食に関してだけでなく、職場での働き方やストレスのコントロールの仕方もとても上手になり、Aさんはどんどん自信を回復していきました。

過食症治療と過食費用の推移をどうとらえるのか

過食症はその人それぞれに合った治療を進めていけば改善できる病ですが、その治療効果の現れ方はゆっくりで、短期間ではわかりづらいことが多く、治療効果の実感が得られずに途中で挫折してしまう方も少なくありません。

過食費用の推移はあくまでも、治療効果の判断材料の一つです。
ですが、治療開始から完治までの過食費用の推移とお子さん自身の変化や環境の変化と照らし合わせてみることで、どのように治療効果が現れ、治っていくのかを全体像として捉えることができます。

過食費用の増減に一喜一憂するのではなく、治療開始から完治までの全体像を意識して治療に取り組むことは、治療に協力されている親御さんの精神安定のためにもとても効果的なのではないでしょうか。

【学会発表を終えて】臨床心理士福田俊介より

<感謝感謝の学会発表>今回の学会発表に際し、いろいろな方々に助けて貰いました。

学会発表に同行し、撮影係までしてくれた公認心理師の益子さん。
グラフや表の取りまとめをしてくれたスタッフの戶塚さん。
かわいいイラスト入りのアンケート用紙を作成してくれたスタッフの湯浅さん。
チーム淀屋橋のサポートには本当に助けられました。

また、学会発表前に、CBTセンターの⻄川先生に発表用スライドに関して貴重なアドバイスを沢山頂きました。⻄川先生との出会いは、本当に運が良かったと思います。

発表後のアンケートには、とても励みになる素敵なメッセージを頂戴し、ありがたい思いでいっぱいです。

「福田先生の技法を私の職場で活用したいと思います」というコメントを見つけた時、発表して本当に良かったと思いました。

発表を聴いてくださった先生方、どこかでお会いした際には、お声がけ頂けると嬉しいです。専門家同士、話し合える交流が深まりそうな予感がします。
記念すべき50回大会で事例を発表させていただいたのは、私にとって、とてもいい経験となりました。

皆さま、本当にありがとうございました。

過食症を乗り越えるための治療説明会のご案内

淀屋橋心理療法センターでは、『過食症を乗り越えるための治療説明会』を定期的に開催しています。

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◆【摂食障害】著書のご紹介◆

淀屋橋心理療法センターの所⻑であり、医師の福田俊一の著書をご紹介します。数多くの臨床経験から、摂食障害を克服するヒントをお伝えしています。治療説明会に来られる方からも「本を読みました」と、嬉しいご感想などもいただいています。

母と子で克服できる摂食障害――過食症・拒食症からの解放:カウンセリング(過食症)

タイトル
母と子で克服できる摂食障害――過食症・拒食症からの解放

概要
摂食障害(過食症・拒食症)の背景には、母と娘の愛憎ドラマが多く見られます。二人がカウンセラーの導きや父親のサポートを得て葛藤を乗り越え、分かりあい支えあう関係に生まれ変わることで、驚くほど症状は良くなっていきます。

本書では、こじれる前の初期段階の事例から始まり、早く手を打てば良くなる段階の事例、そして⻑期化していても克服できることを示す事例を紹介し、症状レベルに合わせた適切な対応やアドバイスをまとめています。⻑い年月摂食障害にかかっていても、治る可能性は十分にあるのです。

克服できる過食症・拒食症―こじれて⻑期化した過食症・拒食症でも治る道はある:カウンセリング(過食症)

タイトル
克服できる過食症・拒食症―こじれて⻑期化した過食症・拒食症でも治る道はある

概要
「あきらめたらあかん!過食症・拒食症にかかったことは、自分の本質に気づき、能力を伸ばすチャンス!」。あくまで前向きに、本人の可能性や家族の力を信頼し、治療を進めていくセラピストたち。「両親のみでも治療をスタートできる」という画期的な治療を行ない、重症化した数多くの患者を快方へと向かわせている。新たな治療の可能性を示した、本人、家族、治療関係者必読の書。

過食・拒食の家族療法:カウンセリング(過食症)

タイトル
過食・拒食の家族療法

概要
「子どもがやせ衰えていく」「娘がかくれて盗み食いを」「食べ出したら自分でも止められない」。過食症・拒食症を抱える本人とその家族の悩みは深い。一見簡単にコントロールできそうなこの問題は、実は本人の生きづらさ・自分さがしというこころの深層に根を張る、成⻑の節目に待ち受ける落とし穴。本人と家族がともにその節目を乗り越え、新しい自分になって歩き出すために、本人と家族のもつ力を信じ、支える家族療法。

学会レポート執筆:《大阪府豊中市淀屋橋心理療法センター》原田友美
学会レポート監修:臨床心理士 福田俊介

2024.11.26  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》原田友美 福田俊介

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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