所長・医師
福田俊一(ふくだ しゅんいち)
大阪大学医学部卒。 大阪大学精神神経科、大阪府立病院神経科にて精神医療に取り組む。 米国フィラデルフィア・チャイルド・ガイダンス・クリニック(P.C.G.C.)にて家族療法をS.ミニューチンに師事。 住友病院心療内科、大阪厚生年金病院神経科、大阪市立小児保健センター精神科に勤務。 厚生省・神経性食思不振症調査研究班メンバー(1984~1986年) 大阪大学医学部非常勤講師(2013年)
カウンセラー
福田俊介(ふくだ しゅんすけ)
臨床心理士・公認心理師(国家資格)
オレゴン大学卒業(University of Oregon Bachelor of Science)
自動車関連会社勤務後、兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達専攻 臨床心理学コース卒業
不登校・過食症で高い治療成績を上げています。
大阪府公立学校スクールカウンセラー
<港で過ごした会社員時代>
大学卒業後、自動車関係の会社に就職。配属されたのは、自動車の北米向け輸出港でした。 作業着にヘルメットという姿で港や船内で仕事をし、オフィスに戻ると作業計画書や会議用の資料等を作成するというブルーカラーとホワイトカラーの両方を経験できる仕事でした。 船長に怒鳴られたり、長身の外国の船員達に囲まれて威圧される等怖い思いもした一方で、沢山の方々に可愛がって頂き、様々な職種・国籍の人々と交流できたことは私にとって、視野を広げてくれる貴重な人生経験となりました。
<30才を目前に悩んだ将来>
ただ、私は当時の仕事に関して少しずつ寂しさを感じるようになっていました。それは、たくさんの人と協力して大きな作業をする楽しさもあるのですが、ひとりひとりとの関係があまり深くはないということです。30歳を目前にした私は、今後の将来どのように生きたいのかとても悩みました。しかし、当時の私には特に強い資格も、何か自信のあるスキルもなかったのです。
<自分の強みを必死で探した>
自分の長所や強みは何なのか?と考え続けました。しかしなかなか答えは見つかりません。一時期、本屋さんに通い続け、<自分の強みを探すワークブック>のようなタイトルの本を読み漁りました。しかし、いまいちピンときません。そして、ようやく私に浮かんだのは、物事の全体像を見るのは、人より得意じゃないか?ということです。 学生時代、あるいは社会人になってから、沢山の議論の場に参加しました。多くの人は議論が白熱していく中で、どんどん前のめりになっていきます。すると、どんどん問題に近づいていって、全体像が見えなくなっていくのです。まさに、木を見て森を見ずの状態です。その結果、とても重要な部分を見落としてしまうのです。ところが、私は議論が白熱している時も、少し問題から距離をおいて見ているので、全体像を見ています。そしてこのまま議論が進むと、問題が起こると気づき、議論の方向性を修正したことが何度もありました。
2つ目の私の強みは分かり易く説明することです。これは私自身が難しい言葉で説明されたり、すごく早口で説明されるのが苦手だからです。何か商品を買って、入っていた説明書が複雑だったりすると、ゾッとして読む気がなくなってしまいます。(笑)その為、私は人に対して、わかりやすい言葉でできるだけシンプルにお話しします。
3つ目は強みというのか分かりませんが、とにかく「人の役に立ちたい!」という情熱がありました。ここまで考えると、ある程度仕事の領域が絞られてきました。 そして最後に気づいたのがこれです。 「よく考えてみたら、うちの父親がやっている仕事がまさにそういう力が生きる場所じゃないか」やはり親と子というのは似ているものなんでしょうか。(笑)私が必死になって探し回っていた答えが、意外とすごく近くにありました。まさに灯台下暗しです。
<カウンセラーになれたけども・・・>
さて、念願のカウンセラーになってからは想像以上に苦労がありました。 人の役に立ちたいという情熱をもち、優しく丁寧に接していたら、どんどん相談は解決できて、人から「先生のおかげです」と感謝され、さぞかし、やりがいのある仕事だろうという風に思っていました。 しかし、現実はそんなに甘くはありませんでした。 私のアドバイス通りに頑張って下さっていた親御さんを励まそうと、「うまくお子さんに対応されてます」と伝えると、親御さんが安心されたのか、気が緩んでしまった様で、その後、お子さんの状態が悪化したり。 解決しかけていたご相談が、最後の最後で予想外のトラブルが起きてしまい、ガッカリと落ち込んだ親御さんが、その後カウンセリングにいらっしゃる気力がなくなってしまって、未解決のまま終わってしまったり。「なぜうまくいかなかったのか?」と休日も一日中考えていた時期もありました。カウンセラーの私にカウンセラーが必要じゃないか?と思ったこともありました。実際、私は当センター所長である父に相談していたので、今になって考えてみると、父が私のカウンセラー役だったのかもしれません。
<私を支えてくれたもの>
ところで、何年も厳しい状況が続く中で、私を支えてくれたものがあります。それは、親御さんが笑顔で語ってくださる嬉しい報告です。 「(過食症になってから)家族と一緒に食事をとらなくなった娘が何年かぶりにみんなと鍋を囲むことができました」 「一度も家族のためにお土産なんて買って来なかった(ひきこもっていた)息子が学校帰りにケーキを買ってきてくれました」 「家で食事中もずっとスマホを触っていた(ゲーム依存の)娘が、食事中はスマホを置いて会話に参加して笑うようになりました」 「(不登校だった娘が学校に行けるようになり、)卒業式の日にくれた手紙には、お父さんお母さんの子で良かったと書いてありました」 このような嬉しいご報告が、私が仕事を頑張れるエネルギー源となっております。
<成果を出す為に特に気をつけていること>
カウンセリングがうまくいかなかった悔しい経験から、特に気をつけていることが4つあります。
1. 親御さんが、私が差し上げたアドバイス通りに対応されているか入念に確認させて頂く もし、親御さんが“アドバイス通りにできているつもり”になっておられて、実際はアドバイス通りにできていなかったとしたら。これは、とてももったいないです。そのようなことがないように、差し上げたアドバイス通りに対応されているか、次回のカウンセリングで時間をかけて確認させて頂いております。
2. お子さんの小さな良い変化を見逃さない
お子さんが不登校(ひきこもり)だったり、過食症だったりすると、どうしてもお子さんが悪いところが目につきやすくなってしまいます。そして、もし明らかに成長している部分をカウンセラーと親御さんが見落としてしまったら。親御さんのカウンセリングへの意欲はどんどん下がってしまい、カウンセリングが中断。このようなことがないように、「小さな行動の変化がないか?」「言葉の表現に変化がないのか?」「本当に何も変化がないのか?」様々な角度から時間ギリギリまで親御さんに質問させて頂きます。 「そういえば、息子は金曜日は登校できなかったけど、『朝起きれなくて、悔しい』と初めて登校できなかった悔しさを見せました」とか、「ああ、思い出しました!娘は以前ならオシャレなレストランでは店員さんに注文できなかったのに、先週は店員さんの目を見て注文していました」。 このように、お子さんが良い方向へ変わっていっていることを見落とさずに、しっかりと把握する。確実に進歩していることが分かれば、親御さんのカウンセリングへの意欲が持続したり、親御さんの不安が軽減し、心に余裕が生まれてきます。それらが、お子さんが元気になり成長する上でとても良い影響を与えてくれるのです。
3. 親御さんを励まし過ぎない
私は、人を支えたいという気持ちがとても強かったので、 特に私のアドバイス通りに対応してくださる親御さんのことは、 「うまくやっておられます!」、「すばらしいです!」と励まして差し上げたくなります。もちろん、励ますということはとても大事なことです。しかし、これはやり過ぎると、親御さんの気が緩んでしまい、良くない結果に繋がるということを経験しました。、 つい励ましたくなってしまう、褒めたくなってしまう。これは私自身の課題でした。そして、その課題は克服できたと思っています。
4. ご家族全体の動きを見る
例えば、長男が不登校になると、ご両親が長男に注目し、寂しさを感じた次男が問題行動を起すことがあります。このようなことがないようにご家族全体の状況を注意して見ています。また、口数の多い長女が大学入学を機に一人暮らしを始めるとなったとします。そして摂食障害の次女がお母さんに対して本音で喋るのが苦手な子ならば、これは治療する上でチャンスとなります。 気をつけるべきこと、またはチャンスとして活かせることがないか、 ご家族全体の動きを見るようにしています。
<最後に>
カウンセリングは最初の頃は大きな成果は見られず、我慢の日々が続く場合もあります。この時期が、成功するか否かを分ける頑張り時です。そして、軌道に乗るまで耐えることができれば、その後はお子さんにどんどん良い変化が起こってきます。お子さんはまず、元気になります。そして、そこでは終わりません。どんどん成長します。そんなお子さんの姿が親御さんの安心に繋がるのです。 子どもが元気になり、親御さんも以前より心が落ち着いてきた。そうなると、家族全体の雰囲気は穏やかで明るいものになってきます。 -温かい家庭って良いですよね。私はそれが最高の癒しの1つだと思っています。さあ、私と一緒に頑張ってみませんか?
当センターでカウンセリングを受けられていた女性の、
「実話をもとにした物語」です。
(ご本人の了解を得て書かせていただいております)
このお話に出てくる女性は、あなたに似ていますか…?