過食症と不登校をカウンセリングで乗り越えた娘
「過食症って一体何!?」母が気づいた大切な思い

過食症と不登校をカウンセリングで乗り越えた娘「過食症って一体何!?」母が気づいた大切な思い

Profile.
お子さんのプロフィール

横山春子さん(仮名)
摂食障害(過食症)と
不登校でのご相談

お父さん、お母さん、春子さん、弟さんとの四人暮らし
【カウンセリング開始時15歳(中学3年生)】

勉強、ダンスが得意な、頑張り屋でしっかり者の女の子
人に頼れない性格です

また、カウンセリング開始当時、お母さんから見た春子さんは
「完璧主義で人目を気にする、外ではいい子ちゃんを演じている子」だったそうです

中学時代は不登校が続きました
過食症の症状が出たのも中学生の頃…

嫌なことがあったりすると、隠れてお菓子をたくさん食べました
そして
「こんな姿誰にも見られたくない」
と泣き、部屋に引きこもっていることもありました

【お母さんが淀屋橋心理療法センターに来所されたのはこの頃です】

春子さんの状態は少しずつ良くなっていき、高校受験は見事志望校に合格しました

ところが、しばらくしてまた不登校になり、高校を中退してしまいます
春子さんは通信制の高校に転校する事になりました

一方その後、甘えるのがとても苦手だった春子さんが、生まれて初めてお母さんに
「ぎゅっとして」と抱き着くようになります

【この少し後、春子さんは過食症を完全に克服しました】

高校二年生になり、春子さんは町の大きな演劇に挑戦することになります
たくさんの葛藤や苦しみを乗り越えながら練習を重ねるのですが・・・

※このケースは、ご本人にアドバイスするのではなく、お母さんにアドバイスをすることで解決したケースです

担当カウンセラー 福田俊介

淀屋橋心理療法センターのカウンセラー
主に不登校・過食症のカウンセリングで、高い治療実績を上げております

Interviewer 湯浅愛美

淀屋橋心理療法センターライター
主に摂食障害や不登校、ほのぼの日記などの記事を執筆しております。

今回、遠方に住んでおられる横山さんには、電話での取材をお願いさせていただきました。
・インタビューに応じていただいた横山春子さんのお母さん(以下【お母さん】)
・担当カウンセラー兼インタビュアー福田俊介(以下、【福田】)
・インタビュアー湯浅愛美
敬称は略させていただきます

【過食症と不登校】カウンセリング卒業の背景にあったのは“子どもの成長”と“お母さんの成長”

横山春子さんのお母さん:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― カウンセリングのご卒業、本当にお疲れ様でした

【お母さん】 ありがとうございます

―― この度カウンセリング卒業ということで、お母さんの今の率直なお気持ちを聞かせていただきたいです

【お母さん】 そうですね…正直、まだ不安はあるんです

毎回カウンセリングに通う度、先生に色々な事(子どもに対する対応や会話の仕方などが間違っていないかなど)を確認してもらいました

そのつど細かくアドバイスしてもらった経験が自分の中に蓄積して力になっていて、「これからは何とか自分でやっていけるかな」…という気持ちに私自身がなったので、この度卒業させてもらおうかなと思えました

卒業のきっかけは、娘の成長も、もちろんあるんですけど
私自身の「成長」というか、私自身の「自信」というか…そういうことが大きいと思います
不安はあるけど…何とかやっていけそうだなぁ、という感じなんです

カウンセリング卒業~もう一つのエピソード~

カウンセリング卒業のもう一つの背景には「春子さんの演劇への挑戦」がありました
市民演劇という大きな舞台です

本番までの数カ月間、「やっぱり演劇なんて出たくない」「これまでやってきたこと全部無駄だったのかも」など、春子さんは様々な迷いや葛藤の中でもがき、苦しみ、それでも必死に練習を重ねました
そして本番当日、春子さんは舞台で見事大成功をおさめました

後日カウンセリングに来られたお母さん
普段カウンセラーの前ではとてもご謙遜なさっていて、ほとんど娘さんを褒めたりしないお母さんなのですが、その日はとても嬉しそうに「春子の踊りが一番上手でした!」と報告してくださったことが印象的でした

この演劇への挑戦が無事に終わった頃から、お母さんは春子さんの自立や成長を強く感じたそうです

【不登校】一年前、教室のドアを開けることが出来なかった春子さんの成長

【不登校】一年前、教室のドアを開けることが出来なかった春子さんの成長:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― 今お母さんから見て、春子さんのどのようなところに成長を感じていますか?

【お母さん】 今、春子は、もうすぐ高校3年生になるので、「勉強をちょっと頑張ろうかな」という感じです

通信制高校は、ほぼオンライン授業だったので本来学校に行かなくてもよかったのですが、今、週3日ぐらいは学校に行っています

授業があるわけではないんですけど、学校に行っているんです!

「朝ちゃんと起きて…学校に行って…そういう習慣をつけなきゃ」
と、春子は言っていました

―― 春子さん、積極的に学校に行かれているんですね
過去と今では、やっぱり色々と変わりましたか?

【お母さん】 全然違いますねぇ

やっぱりあの…例えば1年前だったら、せっかく通信制高校に転校したけれど、春子は学校に入れない、という状態でした 私が春子を車で学校まで連れて行って、一緒に階段を登って教室の前まで行っても、ドアを開けることができない…

1年前だとそういう日もあったのですが、今は嘘みたいですね

今はもう全然私の送迎もなしで、授業がなくても自分の足で学校に行って帰ってきます!

―― すごい、かなり大きな変化ですね
では、春子さんの内面や雰囲気はどうでしょうか?何か変化は感じられましたか?

【お母さん】 うーん、何が変わったんでしょうねぇ?

やっぱり今でも、ウジウジぐちぐち言うこともあるので…
そういうところは変わらないんですけどね(笑)

徐々に変わっていったと思うので、何と言うか…私には春子の内面の変化がはっきりわからないのですが…
でもきっとやっぱり、春子は少しずつ変わっているんでしょうね

何が変わったかははっきりとわかりませんが、何より春子本人が今、すごく楽しそうだから、嬉しいですね、親としては

苦しい日々の中にあった「しんどかったこと」「嬉しかったこと」

苦しい日々の中:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― 春子さんの過食症や不登校、様々なことがあったと思います
お母さんが印象に残っている“しんどかったこと”は何ですか?

【お母さん】 うーん…
「自分なんか生まれなきゃよかった」とか、そういう感じの言葉を春子が言った時が、とてもしんどかったです

「私なんか生きていても意味がない」とか、そういう言葉を聞くのはつらかったです

―― 逆に、印象に残っている“嬉しかったこと”は何ですか?

【お母さん】 え~嬉しかったこと…なんだろう(笑)

苦しい日々の中でも、ミュージカルを一緒に見に行ったりとか
共通の趣味があったので、そういう時だけは二人でキャッキャッと会話ができるんです
そういうことは、よかったなと思います

「過食症、もう理解不能!!」お母さんにとって、過食症とは?

:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― 過食症の事について、お聞かせください

春子さんが過食症だった時、お母さんも大変苦労されたかと思います
振り返ってみて、お母さんにとって“過食症”とは、どのようなものでしたか?

【お母さん】 私にとって、“過食症”とは何か…
うーん…
最初の頃は…そうですね、「意味がわからない!」という感じ

―― 「意味がわからない」というのは?

【お母さん】 春子がダンスをやっていて、体型維持のために、ものすごく食事制限をしていたんです

「太らない食事を作ってくれ」とか「こういう食材を買ってきてくれ」とか…
痩せるために、春子は色々な事を私に頼んできました
私もできる限り春子の要望に応えて、協力していました

それが突然…
グルっとひっくり返ったみたいに、春子がすごく食べ出していることに気づいたんです

その時、「訳がわからない」って混乱しました
あんなに瘦せるために食事制限していたのに、急に食べまくってる…

「なんだこれ…?」って、なんかだかもう理解不可能…
そんな感じです

―― 過食症って、はたから見ると、本当に不思議で訳がわからない・理解が難しいものだと感じる場合がありますよね
私も、過食症の方の色々なケースを知り、そう感じました

“過食症”って、文字通り「食べ過ぎる」だけの病気、というわけではないじゃないですか

食べる食べないという問題以外でも、「痩せないと・きれいにならないと・私ってダメなのかな?」そういう色々な気持ちや葛藤が混ざりあって、自分を追い込んでいきますよね

ですから、お子さんの過食症を一緒に乗り越えてきたお母さんにとって、“過食症”の印象についてお聞きしたかったんです

【お母さん】 本当にもう、理解不可能でしたね、とにかく訳がわからなかったです

散々今まで「太らないご飯を作って!」と言われ続けてきたのに…
一体どうしちゃったの?って、とまどいました

なんでそんなことをするの?なんで??と思ったりもしました

でも、気づいた時にはすでに、春子はきっと過食症になっていたんでしょうね

春子が、自分で制御不可能な状態になって、自分でも訳がわからない状態になっていることを、最初は私もわかりませんでした

今思えば、春子の行動や言動はしょうがないことだとわかるのですが、その時の私は「なんでなん?」「なんでこうなった?」と理解できずにいました

春子は別人みたいになってしまったから…つらかったです

―― 別人ですか

【お母さん】 なんかもう、体も心も乗っ取られたみたいになって…
コロッと変わってしまったから

「どうにかして元の春子に戻したい!」って気持ちでいっぱいでした

カウンセリングを始めてしばらくは
「春子を元の状態に戻して欲しい」「どうしたら昔みたいに戻るんだろう?」
と、長い間ずっとそんなことばかり考えていました

だけど、だんだんわかってきたんです

「過食症を治すということは、そういう事じゃないな」ということが

―― 「そういう事じゃない」とは、どういうことですか?

【お母さん】 「元の春子に戻って欲しい」というのは、間違いだったんです

“過食症を治す”=“元の春子さんに戻す“ことではないと気づいたお母さん
一体それはどういうことだったのでしょうか?
その答えはインタビュー後半に・・・

過食症克服の希望の光
食べることを隠さなくなった時、「大丈夫かも」と思った

食べることを隠さなくなった時、「大丈夫かも」と思った:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― 春子さんの過食症の症状が改善されてきたと実感したのは、どんな時でしたか?

【お母さん】 春子の過食症が本当にひどかった時は、学校から家までの帰り道にある、全てのコンビニやスーパーで、プリンやシュークリーム、パン、唐揚げをちょっとずつ買って、それを隠れて食べていた…と言う状態だったんです

だけどいつからか、買ってきたことを隠さなくなってきたんです

「プリン買ってきた~」とか「コンビニの新作のスイーツ出てたから買ってきた~」って教えてくれるようになりました

食べることを隠さないようになった時、少しだけ「大丈夫かも」と希望の光が見えた気がしました

もちろん治ったとは思っていませんでしたが、良くなっていくかも…という実感が湧きました

子どもの不登校と過食症「別に隠す事じゃない」と思えたきっかけは?意外とみんな色々な悩みを抱えていました

子どもの不登校と過食症「別に隠す事じゃない」と思えたきっかけは?意外とみんな色々な悩みを抱えていました:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

【お母さん】 最初の頃、ママ友に対して春子の事をあまり話せなかったんです ママ友が、春子の同級生のお母さんだったというのもあったので…

春子が通信制高校に転校したことや、過食症のことなど誰も知りませんでした

最初はなかなか言いづらかったですね

だけど、「春子は今、こういう状態で大変なんだ」ということを周りに少しずつ打ち明けられるようになってくると、少し気が楽になりました

勇気を出して打ち明けてみると、まわりもだんだん打ち明けてくれるようになりました

子どもが高校でうまくいってなかったり、学校を辞めちゃったりとか…
実は結構みんな色々なことで悩んでいることがわかったのです

―― 人に打ち明けるのは勇気がいりますよね
打ち明けてみようと思った“きっかけ”はあったのでしょうか?

【お母さん】 さっきの話→「もう理解不能…!!」お母さんにとって、過食症とは?ともつながるんですけれど…

私は最初、春子が過食症になってしまった時「元の春子に戻したい」と思っていたんです
だけど、それは違いました

戻すとか変えるとかじゃなくて…
「今、この子はこういう状態で、ありのままなんだ」ということを、自分の中で納得し、受け入れることができた時、「別に人に隠すことでもないし」という風に、自分の考え方がだんだん変わってきたんです

そうしたら、自然とみんなに打ち明けられるようになっていました

―― 春子さんのありのままを受けられるようになって、隠す必要がないと思えるようになる…それはすごく素敵なことですね

素敵なこと:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

✿ここからは、横山さんの担当カウンセラー福田俊介からのインタビューです↓

子ども本人がカウンセリングを受けなくても過食症は治るの?不登校は改善するの?

子ども本人がカウンセリングを受けなくても過食症は治るの?不登校は改善するの?:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

【福田】 親御さんからよく聞かれる質問があります
それは「カウンセリングに子ども本人が来なくても本当に治るのですか?」というものです
お母さんは当初、同じようなことを思われましたか?

【お母さん】 少しはそう思ったかもしれません
けれど、こちらにお願いしようと考えていた時は「自分の育て方が間違ってたんじゃないか」「子どもじゃなくて私の問題なんじゃないか」という思いがすごく強くて…

当時は、自分自身にすごく問題があると思っていたので「子ども本人が来なくても本当に治るのか?」とかそういう事は、あまり思わなかったです

ホームページを見させていただいていて、どのような方針でやっているのかを多少は把握していたので、あまり不安はなかったですね

なぜ、お母さんはカウンセリングを頑張ることができたのか?

なぜ、お母さんはカウンセリングを頑張ることができたのか?:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

【福田】 横山さんは、とても熱心に頑張ってくださるお母さんでした

【お母さん】 そうでしょうか?

【福田】 ものすごく努力していただいたと思います

摂食障害の症状がおさまった途端、あまりにも摂食障害の症状がキレイに止まったため、安心してカウンセリングに来なくなってしまう親御さんも多いのです
だけどお母さんは、その後もカウンセリングを頑張って続けてくださいました

私がとても興味深いのは、なぜそこまで頑張れたのか?ということです

【お母さん】 最初はやっぱり自分の育て方の責任だと思って、先生にお伺いさせていただきました

でも先生は「私と娘の相性の問題」だと言ってくださったんですよね
それですごく救われた気持ちになりました

私から見て、春子の未来は前途洋々だと感じていました
大学も、きっと春子の行きたい所に行けると思うし、何でもできる子だと思っていたんです

なのに、どうしてこうなってしまったのかな?って…
何とかしたいなっていう気持ちがあったんですよね

だから頑張れたのかな?と思います
でも皆さん頑張っていると思うので、私は普通だと思います(笑)

【福田】 約2年のカウンセリングの中で、お母さんは正直「カウンセリングをやめよう」と思われたことや、落胆してくじけそうになった時はありましたか?

【お母さん】 やっぱり課題をこなすのがしんどいなぁ…という時が何回もありましたね(笑)

ただ、春子にちょっとずつ良くなっている兆しがあったので…
しんどいなぁとは思いましたけど、課題は続けようと思いました
やめようと思う事はなかったです

【福田】 なるほど
しかし春子さんが、時には泣いたり落ち込んだりもするじゃないですか
そういう時お母さんは「もう無理だ」とか、そのように思われましたか?

【お母さん】 それは思いました(笑)
春子がとてもネガティブな事を言う時もありました

でも先生は「それは病気が言わせてることだから、言わせといたらいい」みたいに言ってくださいましたよね
だからそれを思い出して、「これは病気が言ってることだからしょうがないな」と思うようにしました

【福田】 お母さんは、私がお伝えしたことをちゃんと覚えてくださっているから、私もとてもやりがいのあるカウンセリングでした

カウンセリングは、お母さんをどう支えたか?

カウンセリングは、お母さんをどう支えたか?:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

【福田】 私からもう一つ質問です
カウンセラーの私から聞くのも少し変ですが…
カウンセリングは、どういう形でお母さんの支えになっていましたか?

【お母さん】 まず「課題を振り返る」という話を先ほどしましたけど、やっぱり先生に確認していただくということが大前提にありました


振り返って、先生からのアドバイスを聞いて実践して、「いやいやそうじゃない」「これは合っている」と言うのを再確認…また再確認… それを定期的に続けられたことが良かったです

【福田】 確かに確認してもらうという相手がいなかったら、振り返るタイミングがなかったり、様々な出来事を忘れたりしますかね

【お母さん】 そうだと思いますね

【福田】 ありがとうございます

ありがとうございます。:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

【過食症と不登校】自分の責任でもない、子どもの責任でもない
今だから振り返って感じる、お母さんの思い

カウンセリングは、お母さんをどう支えたか?:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

―― 長い間お付き合いいただきありがとうございます
最後の質問です

過食症や不登校のお子さんをお持ちの親御さんの中には、とてもしんどい思いをされていたり、苦労されている方も多くいらっしゃいます

そのような親御さんに向けて、なにかお声をかけて頂ければ幸いです

【お母さん】 皆さんそれぞれいろんな状況だと思うので難しいのですが、ご参考程度にお聞きください

先ほどから何度も同じことを言ってしまうことになるのですが…

当初、過食症や不登校になった春子を、元の春子に戻したいとか、変えたいとか、そんな風に考えていました

だけど、そういう問題じゃなかったな、というのが私の1番の気づきで、みなさんにアドバイスできることかなと思います

春子を何とか元に戻さなきゃ、とか、変えなきゃ、とか「本当にそうかな?そういうことじゃないよな」って、ハッと何かに気づく瞬間がありました

そうじゃなくて、なんというか…
“春子の現状をありのまま受け入れる”というのでしょうか?

自分の認識を新たにするというか
見方を変えるというか

表現するのが難しいですが、そういうことに気づく瞬間があるんです

そしたら、お母さんの気持ちがぐっと楽になるのではないでしょうか
少なくとも私はそうでした

何かこう、うまいアドバイスができないんですけれども…すみません

―― いいえ、とてもすごく大事な言葉だと思います
何か大事なことにお母さん自身が気づく瞬間があるのですね

【お母さん】 見方というか、認識が変わって私自身がちょっと楽になると、なぜか不思議と子どもの状況が良くなっていくというか、だんだん色々なことが良い方向に変わっていきました<

自分の責任でもなかったし、子供の責任でももちろんない
そう思うようになりました

自分の中の凝り固まった考え方がクルッとひっくり返るような感覚だったんですよね

ひっくり返った時が、どこかの瞬間にあったと思うんですけど、はっきりとは覚えていません
その時は気づけなかったのですが、今振り返ってみたら、そう思うんですよね

自分の中で意識が変わった瞬間があり、そこからグッと何かが良くなって、楽になった、という感じでした
うまく言葉にできないのですが(笑)

誰にでも当てはまることでは無いかもしれないので何とも言えないんですけれど
そんな感じです

―― ありがとうございます
言葉で表現することが難しいご経験だったと思うのですが、お母さんの言葉には心に響くものがたくさんありました

【お母さん】 ごめんなさい、うまく説明できないんですけれど…
振り返ってみて、今だからようやく感じることができた思いです

インタビュアー湯浅が感じた【お母さんが伝えたい思いや経験とは】

過食症や不登校を春子さんと一緒に乗り越えていく中で、自分の意識が変化していく経験をされたと話してくださったお母さん
それを言葉にし、表現することは本当に難しいと思うのですが、伝えてくださったことに感謝しております
私なりに、お母さんの言葉をこのように解釈させていただきました 

〝春子さんを元に戻したいというのは違っていた″ということについて…

もし症状が出る前の春子さんに戻したとしても、「過食症」や「不登校」になるかもしれない小さな芽は、すでに春子さんの中に潜んでいたのだと思います
春子さんを元に戻すだけでは根本的な解決につながらないことに、お母さんは気が付いたのではないでしょうか

〝春子さんを変えたいわけではない″ということについて…

「変える」というのは、お母さんにとって、ありのままの春子さんらしさを否定しているように感じたのではないでしょうか

変えるのではなく、もともと持っている春子さんの「頑張り屋な性格」「完璧主義」、その他たくさんの良いところも悪いところも全てひっくるめて受け入れ、その持ち味を生かした生き方をして輝くことを援助しなければ…!ということに気が付いたのではないかと思います

お母さんの意識に大きな変化が生まれ、それに呼応するように春子さんが良い方向に変わっていった、ということについて…

「お母さんがありのままの私を受け入れてくれている」という安心感や心強さが、春子さんに強く伝わるようになり、それまでのお母さんの対応により伸び始めた春子さんの成長の芽が一気に花開くようになりました
その結果、春子さんに自信や勇気を与えることになったと私は感じます

振り返ってみて思い出す、春子さんのちいさなエピソード

振り返ってみて思い出す、春子さんのちいさなエピソード:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

ここから先はインタビューとは別に、印象的だった春子さんのエピソードを少しだけご紹介させていただきたいと思います

ちいさなエピソード① 
「今のままの私でも好き?太っている私でも好き?」

:カウンセリング(摂食障害(過食症)と不登校)

「私のこと、好き?」
春子さんが、少しずつお母さんに甘えてくるようになってしばらく経った頃のことです

春子さんはお母さんをぎゅっと抱きしめて、そう言いました

さらに
「お母さんが私のためにダイエットの方法を一緒に考えて手伝ってくれるのは嬉しいんだけどね、でもそうじゃなくて…今のままの私でも好き?太っている私でも好きでいてくれる?」

そんなことを聞いてくるのです

お母さん「うん」

春子さん「そのことを、たまに思い出させて欲しい
私が太っていても、お母さんが好きでいてくれることを、思い出させて欲しい」

今回、このエピソードを久しぶりに思い出したお母さんは「そんな可愛いことを言ってたこともありましたねぇ(笑)」と言って笑いました
春子さんは、たまに甘えることがあっても普段はとても大人っぽい子なんだそう

「太っている私でも好きでいてくれる?」とお母さんに確認する春子さん
それは「どんな私でもずっとずっと好きでいてほしい」という、春子さんの不安や願いだったのではないでしょうか

その思いを、お母さんに伝えることができるようになった春子さん
とても印象的なエピソードでした

ちいさなエピソード②
「ちょっと適当に、ちょっとずるく!」

「ちょっと適当に、ちょっとずるく、みたいなのが案外大事だったりするよね」

「周りの人の言動を見て、うわ…って違和感を感じても、それをいちいち正すことないじゃん?自分に被害が及ばないなら、ほっとけばいいって思う」

カウンセリング終盤の時期に、春子さんが言っていたセリフです

「こんなセリフ、前だったら考えられないですね(笑)」と、お母さんは言いました

責任感が強く、自分の間違いも他人の間違いも見逃すことができない春子さんでした

「ちょっと適当に」が出来るようになることは、春子さんにとって大きな成長であり、生きやすさの助けになることでもあると思います

何気ないセリフの中で、春子さんの生きる強さを感じられたエピソードでした

インタビューを終えて

お母さんにインタビュー取材をさせていただいて一番印象的だったのは、「言葉にしがたい気持ちの変化」を伝えてくださったことです
カウンセリングを受けている親御さんは、お子さんと向き合っていく道のりの中で、「なにか自身の見方や認識が大きく変わる瞬間」のようなものを感じる方が多くいらっしゃるように感じます

そういった親御さんのお話を聞かせていただけるのは、私にとっても本当に貴重な経験でした
とても感謝しております

お母さんは当初、対面でカウンセリングを受けておられましたが、(遠方のため)中盤からはオンラインに切り替えました

対面カウンセリングとオンラインカウンセリング、両方をご経験されたお母さんにだからこそ聞ける「どちらが良かったですか?」というインタビューなど、ここには載せられなかったお話がまだまだたくさんあります

いつかまた、別の記事であげられたらと思っております

お母さん、ご自身の経験談、お気持ちなど、たくさんのお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました

湯浅愛美

2024.07.17
著者《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》湯浅愛美

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
日本の実践的家族療法の草分け的存在。
初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
著書多数。

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