子どものトラウマ

いじめ等の後遺症

子どものトラウマ

『子どもが学校でのいじめをきっかけに、不登校になってしまった。他人が怖くなり、人目をひどく気にするようになった。昔のことを思い出して、今でも苦しんでいるようだ・・・。』

現代社会には、子どもに「トラウマ」を与えかねない出来事が溢れています。トラウマは生涯にわたって深刻な悪影響を与えることがあります。また、家族の生活全体が変わり、新たな問題が生じる場合もあります。トラウマを回復させ、悪影響を最小限にするためには、なるべく早期に専門的な対応をすることが重要になります。

トラウマとは

トラウマとは、「心的外傷」とも呼ばれ、強い恐怖を伴う圧倒的な体験をしたことで生じた「心の傷」のことをいいます。

トラウマの原因

強い恐怖を伴うあらゆる体験がトラウマの原因になる可能性があります。

  • いじめ(仲間外れ・無視)
  • 児童虐待
  • 家族との別れ(離別・死別)
  • 深刻な事故や自然災害
  • 犯罪 etc.

いじめ

子どものトラウマの原因になりうる代表的なものとして、いじめがあります。
いじめは加害者と被害者、二者間だけの問題ではありません。傍観者などを含め、複雑な集団力学を形成しているため、個人で対処する事は非常に困難です。問題解決には、保護者や教員をはじめとして、関係者の連携と協働が重要になります。

近年は「ネットいじめ」がクローズアップされています。スマホからSNSに悪口を書き込んだり、グループLINEから外したりする、と言った行為が多く見られます。
「ネットいじめ」は、書き込まれた内容が拡散しやすい反面、周囲の大人に気づかれにくく、いつのまにか深刻な事態になっている、という傾向があります。

子どものトラウマの特徴

子どもは大人よりも、ストレスが「体の不調」や「行動上の問題」として現れやすい傾向があります。

  • 心の反応
    怒りっぽい、孤独を怖がる、常に怯えている etc.
  • 体の不調
    頭痛・腹痛、下痢、食欲不振、体重減少 etc.
  • 行動上の問題
    赤ちゃん返り、反抗、自傷行為、無謀な行動 etc.

特に生命の危険を感じるような恐ろしい出来事を体験した場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる場合もあります。 また、発達障害に似た様子や、うつ病(トラウマ性うつ病)などの後遺症が現れる場合もあります。

PTSDとは

DSM-5(米国精神医学会・診断統計マニュアル第5版)によれば、PTSDとは、「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ体験に曝されることで生じる、特徴的なストレス症状群」のことです。

PTSDの症状

PTSDの主な症状は以下の4つです。

  1. 侵入症状(再体験・フラッシュバック)
    思い出したくない外傷的な出来事をくり返し思い出す、夢に見る。
    思い出した時は、実際に体験しているように感じて苦痛を覚える。
  2. 回避症状
    外傷的な出来事に関する人、会話、場所などを避けようとする。
  3. 認知の歪み
    世界や自分に対する考え方が変わり、「世界は危険で、自分は無力だ」と感じるようになる。
  4. 過覚醒症状
    過剰な警戒心があり、些細な事でびっくりする。イライラ感があり、注意を集中することが難しい。自分を傷つけるような、無謀で自己破壊的な行動をする。

以上の症状が1ヶ月以上持続し、生活に支障をきたす場合、PTSDと診断されます。1ヶ月未満で消失する場合はASD(急性ストレス障害)と診断されることもあります。

愛着障害とは

子どものトラウマと密接な関係があるものとして、「愛着障害」があげられます。愛着障害とは、子どもと養育者の愛着形成が不安定であることによって、対人関係上の問題が生じている状態をいいます。

愛着障害の種類

子どもの行動が一定の基準を満たすと、「反応性愛着障害」「脱抑制型対人交流障害」と診断がつく場合もあります。

  • 反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)
    他人に対し過度に警戒し、対人交流が乏しい。自他に攻撃性を示す。
  • 脱抑制型対人交流障害
    知らない人に「ためらいなく」接近し、過度になれなれしくする。
  • 虐待などの場合、子どもはトラウマと愛着障害が相互に関連し、複合的な問題を抱えることが指摘されています。愛着障害が治癒されないと、大人になっても症状が続くことがあります。

    お子さんの来所が必要なトラウマの治療

    子どものトラウマを回復させるには、まずは「安全な環境の確保」が必要ですが、その後、専門的なケアが重要になります。代表的な治療法は以下のようなものです。

    • 遊戯療法(プレイセラピー)
      遊び道具を使って、子どもが自分の気持ちや考えを表現したり探索したりするのを促進し手伝うアプローチ法。
    • 眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)
      眼球運動を通してトラウマ記憶に慣れ、ポジティブな記憶と合わせて適切に過去の記憶として処理していく介入法。
    • トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)
       子どものトラウマに焦点化した認知行動療法。
    • 長時間曝露法(PE)
       分断されたトラウマ記憶に長時間触れさせる事によって記憶の再構成を促す介入法。

    お子さんの来所が不要な当センターの治療

    上記の治療は、基本的にお子さん本人がカウンセリングに参加する必要がありますが、「トラウマについて触れられたくない」などの理由で、継続的なカウンセリングが困難になる場合があります。

    当センターの治療法では、ご本人にお越し頂く必要がありません。トラウマで苦しんでおられるお子さんを持つ親御さんに、お子さんへの関わり方をお伝えすることで、トラウマからの回復を支援します。

    親御さんに、お子さん専属の身近なカウンセラーになって頂きます。そうすることで、毎日会っている親御さんの方が、たまに会うプロのカウンセラーよりも優れた効果を引き出すことができます。

    「親の育て方が悪かった」「親に過去にこんなことをされた」など、親御さんの過去の行為をお子さんが責めてくる場合は、特に当センターのカウンセリングが有効です。また、いじめの後遺症のケアについても豊富な経験があります。

    子どものトラウマの支援を検討する際は、是非当センターのカウンセリングもご検討ください。

    最終更新日:2024.10.11

    こちらの記事の監修医師

    淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

    淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

    • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
    • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
    • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
    • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
    • 著書多数。

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