アダルトチルドレンとは?原因となる家庭環境・症状の特徴・治し方について

最近耳にすることが多くなった”アダルトチルドレン”という言葉の意味をご存じですか?大人(=アダルト)子ども(=チルドレン)という言葉の響きから間違った理解をされることが多いのですが、決して”子どものまま成長できていない大人”という意味ではありません。

子どもから大人へと成長する時期に、家庭において何らかのトラウマを受けてしまい、人とのコミュニケーションがうまく取れない等の問題を抱える気質を示す言葉です。

それでは、アダルトチルドレンの主な原因・特徴・治し方について解説します。

アダルトチルドレンとは?

アダルトチルドレン(AC)は医学的な病名ではありません。
日常生活における生きづらさや人間関係構築の難しさ、自分の意思を相手に伝えることの苦手意識などを感じる方を総称した言葉です。

アダルトチルドレンの概念は、1969年マーガレット・コークによってカナダで出版された”The forgotten children : a study of children with alcoholic parents”(訳『忘れられた子どもたち:アルコール依存症の両親と共に生活した子どもたちの研究』)で記されたのが始まりでした。

その後、アルコール依存症だけに止まらず、子どもたちにとって適切な家庭環境を築けなかった親または養育者にまで原因対象を拡げていきました。

つまり、アダルトチルドレンは病気などではなく、生きづらいと感じる気質を表現した言葉なのです。

アダルトチルドレンになる主な原因

生きづらさを感じてしまいやすい”アダルトチルドレン”になってしまう主な原因は、親や養育者との関係性や成長過程での養育環境であると言われています。代表的な原因は以下の5つです。

  1. アルコール依存症の親(または養育者)のもとで育った
  2. 親(または養育者)から虐待を受けて育った
  3. 厳格すぎる親(または養育者)に育てられた
  4. 家族構造が機能していない家庭で育った
  5. 生まれつきの特性・体質を理解しない親(または養育者)によって育てられた

それぞれについて詳しく解説していきます。

アルコール依存症の親(または養育者)のもとで育った

アルコール依存症にかかると、飲酒の量・タイミング・状況などを自分では制御できなくなってしまいます。そのため、アルコール依存症の親(または養育者)が子育てをすると、生活の中心は子どもではありません。アルコールを飲むことにのみ興味が注がれているため、子どもには注意を払うことができなくなるのです。

このような環境で育った子どもたちの中には、アルコールが切れただけで暴力を振るわれたり、夜中でもアルコールを買いに行かされたりといった辛い経験をしている子もいます。

親(または養育者)から虐待を受けて育った

親(または養育者)からの虐待には、以下のような例が挙げられます。

  • 身体的虐待
  • 心理的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト(※)
  • 育児放棄

虐待・ネグレクトを日常的に受ける環境下で成長を遂げると、心身ともに悪影響を受け、他者との信頼関係を結ぶことが困難になる傾向があります。

(※)ネグレクト:子どもに対する保護や養育責任を果たさないこと。病気が発症しても医療機関に連れて行かない医療ネグレクトや学校に通わせない教育ネグレクト、必要な食事を与えない栄養ネグレクトなど、特に乳幼児期では死の危険性を伴う行為。

厳格すぎる親(または養育者)に育てられた

どこからが“厳格すぎる教育”になるかという定義はありませんが、家庭内で常に子どもを萎縮してさせてしまうような環境もアダルトチルドレンを生み出しやすいと言われています。

<厳格すぎる教育の代表例>
  • 家庭内で子どもが自由な発言や行動を行えない
  • 子どもの幸せを搾取する
  • 子どもを理想像どおりに育てようとしすぎる
  • 子どもの自然な精神的発達を阻む
  • 子どもを常に自分のコントロール下に置く

「子どものため」という名目であっても、厳格すぎて子どもの自由や自然な成長を阻む行為が日常的に行われることで、自立心や自発性の成長をも阻むことにつながるのです。

家族構造が機能していない家庭で育った

家族構造が機能していない家庭内では、常に大きなストレスを抱えながら過ごさなくてはなりません。本来家庭とは心が休まる場所であり、家族がお互いをリスベクトし合って過ごすものです。しかし、虐待が常習化していたり、家族同士の仲が極端に悪かったり、情緒不安定な家族がいたりすることで、心の成長が促されずにアダルトチルドレンの気質を生み出すことがあるのです。

生まれつきの特性・体質を理解しない親(または養育者)によって育てられた

子どもにはそれぞれ個性があり、生まれつき備わっている特性や体質があります。
しかし、その特性を理解できず、なんとか思い通りにコントロールしようと日常的に怒鳴りつけたり、暴力をふるったりといった不適切な教育を行うことで、アダルトチルドレンの原因を作り出します。

たとえば自閉的な性格・ADHDの傾向・発達障害といった子どもの親のすべてが、その特性について理解しようと努めるわけではありません。それどころか特性に気づくことなく、支配的にコントロールしようとすることさえあります。その結果、成人になった際に社会適応がうまくできないという問題を発生させます。

アダルトチルドレンの主な特徴6つ

アダルトチルドレンの特徴は、主に6つに分類されます。それぞれについて見ていきましょう。

①ヒーロー:極端な完璧主義

親からの期待や圧力に応えるために、ヒーローのように何でも完璧にこなそうとする気質。このタイプの方は自発的な努力ではなく、家庭内での居心地を改善するために、良い成績を取ろうと努力します。

②スケープゴート:身代わり

家庭内の怒りや憎しみなど、ネガティブな感情を一切引き受けようとするタイプです。そのため、非行や低い成績を取るといった問題行動を起こします。

③ロスト・ワン:存在の希薄性

自分は家庭内に存在しない者として過ごします。家族との関係性を持たず、気配を消して生きようとします。

④ケアテイカー:自己犠牲

家族のために自己犠牲を払ってでも、献身的に世話をします。そうすることで、家族としての形を保とうと、自虐的に努力するのです。

⑤ピエロ:過度なムードメーカー

暗い家庭では少しでも家庭内の雰囲気を明るくしようと、ピエロ役となり笑わせる努力をする子ども。このタイプは空気を読み過ぎるあまり、過度に周りの表情を伺い、暗い雰囲気になることを極端に怖がる傾向にあります。

⑥イネイブラー:助長行動

アルコール依存症の親を喜ばせるために、アルコールを用意するといった助長行動を取る特徴。家族のために尽くしたいという感情が大きいのですが、このタイプの方は相手のためにならない尽くし方をしてしまいます。

現在主流となっているアダルトチルドレンの治し方

アダルトチルドレンの解決法についてはさまざまな見解がありますが、以下のようなステップを踏むことが多いとされています。

グリーフワーク
今まで秘めてきた家族への思いを吐き出すことで、嘆きや悲しみを表現する方法。
ナラティブセラビー
治療者の協力のもと、過去の自分を見つめ直すことで本来ある個性を取り戻す方法。
認知行動療法
事柄に対する考え方を再構築し、受け止める方や今後の行動を変化させていく方法。

しかしながら、前述にもあるとおり、アダルトチルドレン特有の生きづらさの原因や症状は個人差が大きく、一般的な療法だけでは軽減に至らないケースもあります。

当センターの考えるアダルトチルドレンの治し方

共依存やアダルトチルドレン・毒親などの概念は、自分の置かれた状況を理解する上では役に立つのですが、その概念から脱出しようとした時に問題が起こります。脱出しようとしてもうまくいかないのです。
それは自分でも気付かないうちに、概念に囚われすぎてしまっていることが多いからです。だから、脱出しようと思ってもそこから抜けだすことができないのです。
当センターでは、アダルトチルドレンとなってしまったことによって失われてしまった、その人本来の持ち味・自己肯定感・自信などを回復するためのプログラムを用意しています。

まとめ

アダルトチルドレンは成長過程において家族(養育者)との関係性を築くなか、なんらかの心的外傷を受けたため、生きづらさを抱えてしまった方を指す言葉です。
誤解されがちですが、”成長しきれていない大人”という意味では決してありません。

一般的には、親との関係において傷ついたり、伸ばせなかった自分を今後どのように伸ばしていくのかというのがテーマになりますが、もし、親がまだ元気であり、自分のことを心配してくれているならば、親の協力を得て傷を治し、伸ばせなかった芽を伸ばすことも可能です。
しかし、家族に対するマイナス感情も激しいと思われますので、家族のプラスの力を生み出し解決するには、熟練した家族療法の専門家の援助が必要です。

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2023.03.19  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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