アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下することで皮膚のかゆみや湿疹などの症状を繰り返す疾患です。子どもの発症が多いですが、成人における有病率も2%程度(日本の場合)だと言われています。また、アトピー性皮膚炎では、皮膚症状の他にも、喘息や花粉症などのアレルギーを併発するケースも多いのが特徴です。この記事では、アトピー性皮膚炎について詳しく解説します。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の主な症状は、皮膚のかゆみや湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。例えば、1歳未満で発症した子どもの症状としては、かゆみと共に赤い発疹が顔や首・頭皮・手・腕・脚などに現われます。その症状が進行していくと、1~2ヶ月ほどして発疹が出た場所が乾燥し、皮膚が厚くなったようになります。また、体の広い部分にかゆみや発疹症状が出ることが多く、かきむしることで症状がさらに悪化するケースも多いです。

一方、成人してからアトピー性皮膚炎になった場合、首や膝・ひじの内側など狭く限られた部分に、発疹やかゆみが現れます。アトピー性皮膚炎の症状が顔に集中している場合、白内障や網膜剥離などを引き起こす可能性も高くなるので、注意が必要です。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下することが原因で発症します。どのようなメカニズムで皮膚のバリア機能が低下するのかは、現在のところはっきりとは解明されていません。しかし、皮膚の水分保持を担っている「フィラグリン」と呼ばれるタンパク質が少なくなることで、皮膚が乾燥しやすい状態になり、バリア機能が低下するのではないかと考えられています。

また、私たちの皮膚は3つの層から形成されています。その中の角質層と呼ばれる部分の水分が蒸発すると皮膚が乾燥し、病原体や異物などが侵入しやすい状態になります。そうなると、アレルギーを引き起こす物質が侵入し、アトピー性皮膚炎を発症するきっかけとなるのです。

アトピー性皮膚炎の発症原因として、皮膚のバリア機能の低下以外では、下記のような原因が挙げられます。

・ダニやほこり、カビや花粉など
・衣類などの摩擦による刺激
・洗剤などの日用品に対する不耐性
・寝不足や疲労
・ストレス など

アトピー性皮膚炎の検査方法や診断について

次に、アトピー性皮膚炎の検査方法や診断についてお伝えします。アトピー性皮膚炎と診断するためには主に「血液検査」と「皮膚テスト」という検査を行い、確認します。

・血液検査

まず1つ目は、血液検査です。血液検査では、アレルギーが生じている時の値が高くなる「lgE抗体」と呼ばれるタンパク質や、アトピー性皮膚炎の発症に関係している「TARC」と呼ばれる皮膚の細胞から作られる物質の量を調べていきます。血液を調べて、これらの値が高くなっている場合は、アトピー性皮膚炎が疑われます。

・皮膚テスト

2つ目は、皮膚テストです。皮膚テストでは、発症の原因となっているアレルゲンを皮膚に晒して、皮膚の状態を観察します。また、皮膚に注射などで少量のアレルゲンを注入して反応を観察する「ブリックテスト」と呼ばれる検査も行われる場合があります。

アトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎の治療方法としては、主に「スキンケア」と「薬物療法」が行われます。アトピー性皮膚炎は、一度発症すると根本的に治す方法が現在のところ発見されていません。そのため、治療は皮膚のバリア機能の改善や維持・そして乾燥させないためのスキンケアが中心となります。

アトピー性皮膚炎の治療方法

治療方法

・薬物療法

薬物療法では、主にステロイド外用剤が用いられます。症状が悪化したり回復したりを繰り返すアトピー性皮膚炎は、常に外用剤を塗り続け、改善状態を出来るだけキープすることが重要なのです。また、2018年にステロイド外用剤などの治療法で十分な効果が現れない場合に、注射薬である生物学的製剤が登場し、それらの使用も必要に応じて検討されます。さらに、ステロイド薬の副作用でなかなか治療が進まない人に対しては、2020年に登場したバリシチニブ経口投与などの使用が行われるケースもあります。

ステロイド薬を使用した治療は、副作用が心配で敬遠する人も多いかもしれません。しかし、ステロイド薬は経口薬に比べて患部にだけ塗るので、部分的な副作用のみが生じる場合が多いと言われています。そのため、症状が軽くなり、ステロイド薬を塗る頻度が少なくなれば、早い回復が期待できるのです。全身的な副作用は少ないとされているので、過剰に怖がる必要はないでしょう。ただ、自己判断で薬の増減をするのは症状をさらに悪化させてしまう可能性があるので、しっかりと医師と相談のうえで治療することが大切です。

・スキンケア

スキンケアは、皮膚の状態を清潔に保ち、乾燥を防ぐための保湿に重点を置くことが重要です。まず、体の洗い方ですが、清潔にしようと思いゴシゴシ洗うのは避けてください。ボディソープをしっかりと泡立て、その泡で体を優しく洗いましょう。その際、泡立てネットなどを使うと、きめ細かい泡を作ることが出来ます。顔や足の付け根、関節部分など湿疹がある部分も丁寧に洗います。お湯の温度は、高温すぎるとかゆみが強くなる可能性があるので、あまり熱すぎない温度に設定することが大切です。

体を洗い、タオルで拭いた後は、すぐに保湿を行いましょう。体に水分を含んでいる状態のときが効果的なので、着替える前に保湿をすることをおすすめします。保湿剤は、こすらず皮膚の上に乗せる感覚で、たっぷりと塗ります。

・心理療法

心理療法を用いることにより、ストレスの軽減や、イライラを抑えることができるため、搔きむしったり、血が出ることが減ります。 効果のある心理療法は限られますが、患者さん一人一人に合った治療を行なうことで、効果を上げることが期待できます。

アトピー性皮膚炎の予防方法

アトピー性皮膚炎は、発症原因がはっきりと解明されていないため、確実な予防方法は現在のところありません。しかし、体質的な問題や環境によって発症する可能性があることが分かっているので、それらの原因を日常生活の中から取り除くのは予防方法として有効だと考えられています。

例えば、ホコリやダニなどハウスダストはアトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があるので、毎日掃除機をかけたり、窓を開けて換気を心がけたりすることが大切です。また、ストレスなどでもかゆみが強まる傾向があるので、適度なストレス発散も重要でしょう。そして、アトピー性皮膚炎が発症してしまった際は、それ以上悪化させないために皮膚への刺激を極力少なくし、患部を常に清潔な状態に保つことをしっかり意識してみてください。

アトピー性皮膚炎になる人の心理的傾向

アトピー性皮膚炎の人達の傾向として、気遣う、自分の感情を抑え気味、感情を発散させる習慣が少ない等の傾向がしばしば見られます。 もう少し我を出したり、自己主張する、自分の気持ちを表現する力を高める等することで、劇的に症状が改善される人もいます。 しかし上記のような、自分を抑制する傾向の生き方のほうが世の中で受け入れられやすいために、なかなか殻を破れない人たちが多いのも事実です。 自分に自信を持ち、表現する習慣をつけるために、場合によってはカウンセラーなどからの専門的な助言が必要となります。

アトピー性皮膚炎による心理的影響

アトピー性皮膚炎になると、身体的な影響だけではなく、心理的影響も及ぼします。

症状が悪化し皮膚の状態が悪くなることで、見た目にコンプレックスを感じてしまう、人から皮膚のことを指摘され、傷ついてしまい外に出ることが怖くなってしまう等、容姿のことでストレスを感じてしまう方もいます。

また、いつまでこの症状が続くのか?など、将来に対する強い不安がストレスになったり、痒みを我慢できずに掻きむしってしまうことで新たな傷ができ、「自分は我慢ができない」と落ち込んでしまい、症状が悪化するケースもあります。

ストレスを溜めることで症状が悪化する→悪化することで新たなストレスができる・・・このような悪循環に陥らないためにも、本人がストレスを溜めないための工夫をすることや、周りの人達の正しいサポートも大切です。

アトピー性皮膚炎による心理的影響

まとめ

アトピー性皮膚炎は、子どもの発症が多いと言われていますが、成人でも少なからず発症する疾患です。一度発症すると完治させることは難しく、症状を抑えながら付き合っていく必要があります。

はっきりとした発症原因が解明されていないこともあり、確実な予防方法は研究段階ではありますが、ハウスダストやストレスに気をつけることは予防として有効とされています。また、皮膚への刺激や乾燥も症状を悪化させる1つの要因ですので、日頃から保湿などを心がけると良いでしょう。

2022.11.28  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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