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起立性調節障害(OD)とは?
起立性調節障害(OD)は、起立時に動悸やめまいなどが起こり、その場で意識を失うこともある自律神経関連の疾患のことを言います。特に、思春期の子どもに多く、朝方に重い症状が生じ、身体を起こせずに学校へ行けなくなるケースもめずらしくありません。
自分の意思では、どうにも出来ない疾患でもあり、人知れず苦しんでいる方が多いのが現状です。この記事では、起立性調節障害がもたらす症状や原因、治療方法などについて解説します。
起立性調節障害の症状
起立性調節障害の症状としては、下記のようなものが挙げられます。
- 朝、なかなか起き上がれない
- 立ち上がった時や起立時に、めまいや立ちくらみが起こる
- 動悸や息切れがする
- 顔面蒼白
- 食欲不振
- 頭痛や倦怠感
- 腹痛など
上記のような症状の他に、病状が悪化することで注意力が散漫になり、思考力の低下や日常生活に支障が出るケースも多いと言われています。
起立性調節障害の原因とは
起立性調節障害は、自律神経の異常によって循環器系の調節が上手く出来なくなることが原因で起きると考えられています。私たちは、座った状態から立ち上がる際には血圧を一定に保っていないと倒れてしまいます。そのため、自律神経の1つである「交感神経」の働きで、重力によって下半身に血液が溜まらないように血管を収縮させて心臓へ戻る血液量を増やし血圧を安定させているのです。しかし、起立性調節障害の方は、この交感神経の働きが弱くなるため心臓へ戻る血液量が減少し、血圧の低下によって脳への血液が足りなくなることが影響し、動悸やめまい・失神などを起こしてしまいます。
さらに、自律神経自体の働きが低下している場合も、起立性調節障害を発症する原因となることもあるでしょう。具体的には、運動不足や睡眠不足による自律神経の乱れや、精神的なストレス、体質などが発症要因として挙げられます。
起立性調節障害の原因は多岐に渡るのです。
起立性調節障害の検査方法や診断
起立性調節障害が疑われる時は、まず問診を行います。当事者からの訴えを確認した上で、血液検査・尿検査・レントゲン検査・心電図などの検査を実施します。これらの検査は、起立性調節障害と似たような症状が出る他の疾患の可能性を除くために行われます。検査の結果、他の病気の可能性が疑われないとなると、最終的に「新起立試験」を行い、診断を確定させます。
具体的には、患者さんの体に心電図と血圧計を装着し、モニタリングしながら10分間ベットの上で安静にしながら仰向けで寝てもらいます。この間、心拍数と血圧を3回測定します。 その後、患者さんに立ち上がってもらい10分間起立を維持してもらいます。起立後数分おきに血圧と心電図を測定し、一時的に低下した血圧がどれくらいの時間で元に戻るのかチェックします。 体の不調が顕著となる時間帯である早朝や午前中に検査を受ける必要があります。
起立性調節障害の治療方法
起立性調節障害は、一度発症すると自分の意思ではコントロールが難しいと言われています。また、ミドドリンやアメジニウムという薬を使用する場合もありますが、薬物療法のみでは十分な効果が見込めないケースも少なくありません。そのため、生活習慣を改善していくことが大切です。
1.規則正しい生活を心がける
規則正しい生活は、自律神経の乱れを改善する一番の近道だと言えます。まずは、3日ごとに起床時間と就寝時間をずらしていき、徐々に規則正しい生活リズムに戻していくように心がけましょう。
当事者だけでは、なかなか朝が起きられないケースも多いので、家族や周囲の人にも協力してもらいながら無理のないペースで行うことが重要です。
2.ストレスを適度に発散できるようにする
過度なストレスは自律神経の乱れを誘発する原因になります。そのため、可能な限りストレスを溜めないような生活環境を整えましょう。
3.定期的に運動をする
運動不足は、正常な血液の循環に必要不可欠な筋力の低下を招きます。起立性調節障害の方は、午前中に行動できないことが多いため、体を動かす習慣が少なくなりがちです。
このような生活が続くと、筋力がますます低下して症状の悪化に繋がるので、定期的に運動を行うようにしましょう。
4.塩分と水分を意識的に摂取する
塩分と水分を多めに摂取すると、血圧の低下を防ぐことが可能です。そのため、塩分は1日10g程度、水分は2リットル程度を目安に摂取することをおすすめします。
起立性調節障害の受診は何科?
起立性調節障害は、小児科や内科への受診が可能です。特に、小児科の医師は起立性調節障害の知識を持っていることが多い傾向にあり、気軽に相談が出来ます。また、小児科でも内科でも、医療機関を受診する際は起立性調節障害の症状が現れている午前中に行くようにしましょう。午後になってしまうと症状が回復することで、主訴が上手く伝わらない場合があるからです。
起立性調節障害の方にとっては、午前中に医療機関を受診するのは体調的に困難だと思います。しかし、正確な診断がなされ治療に繋げるためには、この点を心がけるようにしましょう。
起立性調節障害の予防方法
起立性調節障害は、自律神経の乱れによって引き起こされます。そのため、普段から自律神経が乱れないような生活を意識すると良いでしょう。規則正しい生活はもちろん、食事などにも注意すると効果的です。栄養バランスの整った食事は、自律神経を正常に保つために欠かせません。
また、自律神経が普段から乱れやすい方には、漢方やツボ押しなどを日常生活に取り入れるのも有効です。おすすめのツボは、「労宮(ろうきゅう)」や「合谷(ごうこく)」、「神門(しんもん)」や「内関(ないかん)」、「肩井(けんせい)」や「百会(ひゃくえ)」、「安眠(あんみん)」や「湧泉(ゆうせん)」、「三陰交(さんいんこう)」などがあります。このようなツボを、少し強いくらいの力加減で押しながら日々継続することで、自然と自律神経が整い、起立性調節障害の予防に役立つと言われています。
また、漢方の世界では、起立性調節障害の症状で生じるめまいは、水分代謝が悪いことによって起こるとされています。そのため、普段から体の中の水分代謝を整える目的で、「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」と呼ばれる漢方薬が有効だとされています。煎じて飲むタイプや顆粒のものなど、市販でも手に入れやすい種類の漢方ですので、起立性調節障害の予防と併せて、めまいが起きやすい方は検討してみると良いでしょう。
淀屋橋心理療法センターの起立性調節障害に対する考え方
起立性調節障害と診断されたことで、劇的に効果のある薬があればいいのですが、今のところそのような薬はできていないようです。 今後に期待したいと思います。
起立性調節障害と診断されてもいつも朝起きづらいわけではなく、何か楽しいイベントが朝早くからある時にはスキッと起きられる人も結構いるようです。そういう人たちは、起立性調節障害もあるでしょうが、起きなければいけないという理性がある一方で、気分や感情がついてこないという気分の問題に大きく左右されている印象を持ちます。気分や意欲をあげるためのカウンセリング が効果的です。
まとめ
起立性調節障害は、午前中を中心に症状が現れ午後になると自然と治ってしまうため、周囲の人から理解されにくく、「怠け病」と思われるケースも多いです。しかし、起立性調節障害は自律神経の乱れが原因で起こるものなので、放置しているとさらに症状が悪化する可能性があります。
一度発症してしまうと、完全に症状が落ち着くまで治療を続けていく必要があります。そのため、なるべく早期の段階で自律神経の乱れを整えることが重要なのです。