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統合失調症とは?
統合失調症は、思春期から青年期にかけて発症しやすく、男女別に見ると男性の割合が多いとされている精神疾患です。主な症状としては、幻覚や妄想による精神病症状や意欲・自発性の低下、認知機能の問題などが現れます。
また、統合失調症は、世界規模で見ると100人に1人程度の割合で発症しているため、珍しい疾患ではありません。この記事では、統合失調症の特徴や症状、治療法などについて解説します。
統合失調症の症状
統合失調症の症状には、「陽性症状」と「陰性症状」、「認知機能障害」の3種類があります。
1.陽性症状
陽性症状には、「妄想」や「幻覚」、「思考障害」などがあります。
妄想は、「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」というような、実際には起こっていない物事を強く確信する症状です。また、幻覚は、まわりに誰もいないのに「命令する声が聞こえる」「そこにないはずのものは見える」などのような症状が生じます。
一方、思考障害は、思考が混乱して、考え方に一貫性がなくなります。例えば、会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかが分からなくなるケースが少なくありません。
2.陰性症状
陰性症状としては、「感情の平板化」や「思考の貧困」、「意欲の欠如」や「自閉(社会的引きこもり)」などが挙げられます。
感情の平板化は、喜怒哀楽の表情が乏しくなり、他者の感情表現に共感することが少なくなる点が特徴です。また、思考の貧困は、会話の中で、比喩や抽象的な言い回しが使えなくなったり、理解できなくなったりすることを指します。
意欲の欠如は、自発的に何かを行おうとする意欲がなくなったり、いったん始めた行動を続けたりすることが難しくなる症状です。さらに、自閉(社会的引きこもり)は、自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなるという特徴があります。
3.認知機能障害
認知機能障害には主に「記憶力の低下」や「注意力や集中力の低下」、「判断力の低下」などが見られます。
例えば、記憶力が低下すると、物事を覚えるのに時間がかかるようになるでしょう。また、注意力や集中力の低下は、目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることが出来なくなります。
なお、判断力の低下は、物事に優先順位を付けるために判断したり、計画を立てたりすることが困難になる点が特徴です。
統合失調症の各々の期間における症状
統合失調症には、期間ごとにいくつかの異なる症状が見られると言われています。以下に、それぞれの時期に多く現れる症状をお伝えします。
・前兆期
前兆期では、眠れなかったりイライラしたり、なんとなく変だなと感じるケースが多くなります。
・急性期
急性期は、幻覚や妄想などを体験しやすい時期です。また、自分が病気だとは思っていないにも関わらず、他人から見れば奇妙な行動をしていることが多くなります。さらに、まわりの出来事に敏感になったり、不安や緊張を強く感じたりするようになるのも特徴です。
・回復期
回復期では、元気がなくなり、やる気が起こらなくなるといった陰性症状が残る場合があります。これは、急性期に心と体のエネルギーを多く使ったことによる反動だと考えられています。
・安定期
安定期では、徐々に心と体が安定し、生活の範囲を広げられるようになって行きます。しかし、薬の飲み忘れなどによって再発しやすい時期でもあるため、注意が必要です。
統合失調症の原因について
統合失調症は、未だに明確な原因が分かっていません。中には、統合失調症の発症には遺伝的な要因が強く関与しているという説もあります。しかし、統合失調症の発症リスクを高める作用を持った遺伝子の特定には至っていないのが現状です。
また、最近では神経伝達物質であるドーパミンの過剰分泌も発症原因の可能性として挙げられています。ドーパミンは、興奮や快楽に関わる神経伝達物質の1つですが、この成分が過剰に分泌されると、幻覚や妄想・興奮状態を引き起こすと考えられているのです。
他には、思考などを司る脳の部位の萎縮や、前頭葉・側頭葉などの委縮も統合失調症の発症に密接に関わっているという捉え方もあります。また、もともと統合失調症になりやすい素因が存在し、人生早期の環境要因や思春期のストレスなどがきっかけで発症するケースも存在するとされています。
統合失調症の検査方法や診断
現在の日本では、統合失調症を正確に診断するための、単一の検査は存在しません。そのため、当事者が訴える幻覚や妄想などの陽性症状や、思考の貧困や意欲の欠如などの陰性症状をもとにして、注意深く問診を行いながら診断がなされます。また、統合失調症の診断を決定するためには、統合失調症に似ている症状を持つ他の病気の可能性を除外することも重要です。
似たような症状が現れる病気としては、てんかんや甲状腺機能障害などが挙げられます。これらの病気との識別を目的として、血液検査や尿検査、脳波検査やCT・MRI検査などが実施されます。このように、総合的に様々な他の疾患の可能性を除外した上で、最終的に統合失調症の診断が確定することになるのです。
統合失調症の治療方法
統合失調症の治療方法としては、主に薬物療法と心理社会療法の2つがあります。
・薬物療法
薬物療法では、抗精神病薬が中心に用いられます。なお、当事者の症状の現れ方によって、抗不安薬や睡眠薬なども使用しながら治療を行います。
・心理社会療法
薬物療法に加えて、認知行動療法や疾病教育などを組み込み、社会生活に戻るために必要なリハビリをします。統合失調症は、慢性的に症状が経過して一度治まったと感じた症状が再燃することも多い疾患です。
そのため、段階的に現れる症状に合わせ、必要に応じて治療を継続的に行っていくことが重要だと考えられています。
・最近の知見
妄想中のクライアントへの対応等に関して、「浦河べてるの家」のスタッフさん達は、独自の対応方法を工夫し成果をあげています。 これは今までの心理療法ではできなかったことです。
また、「オープンダイアローグ」という手法では、患者さんを前にオープンなディスカッションをします。 患者さんとの対話をしつつ、複数のスタッフや家族も含め、オープンにその人の病状についてディスカッションする方法です。
この方法は、再発のリスクや予後に良い影響を与えるとされている新しい療法です。
・当センターでは
統合失調症は、薬物療法が中心になるため、当センターでは治療のお手伝いをしておりません。
統合失調症の予防方法
統合失調症は、現在はっきりとした原因が分かっていないため、効果的な予防方法も確立されていません。しかし、人生早期の環境要因や思春期のストレスなどがきっかけになると言われているため、要因となり得るものを極力取り除くことが重要です。
また、当事者は統合失調症が発症していても、気づきにくいという特徴があります。そのため、周囲の人と普段からコミュニケーションを取りやすい関係性を築くことも
統合失調症になりやすい人の特徴
統合失調症は、様々な要因が絡み合って発症するケースも多いとされています。そのため、一括りに統合失調症になりやすいタイプを明確にすることは困難です。しかし、統合失調症を発症する傾向にある人にはいくつかの共通点が挙げられます。
- 身内に統合失調症の人がいる
- ストレスへの耐性が弱い
- 内向的な性格で、他人とコミュニケーションをとるのが苦手
上記のような特徴がみられる人は、感情を抑えがちで自分の意思を表に出すのが苦手な人が多いと言われています。つまり、統合失調症の発症原因と考えられるストレスによるダメージを、大きく受けてしまう可能性があるのです。
また、身内に統合失調症の人がいる場合、遺伝的な要因から統合失調症を発症しやすいと見られるケースも存在します。
まとめ
統合失調症は、現段階では明確な発症原因が確認されていません。そのため、多くの疾患の中でも発症を予防するのは難しいと言われています。しかし、生活環境の調整やストレスの回避などで、予防に繋げることは可能だと考えられています。
また、統合失調症は思春期に発症する場合が多いため、少しでも精神面に異常を感じたら、適切な治療を受けられるように、早めに医療機関を受診しましょう。
一方、当事者だけではなく、周囲の人の発見も症状を悪化させないための大切なポイントになることを覚えておきましょう。